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 海外企業の経営者と会ったり、現場を見たりしていると、今までの日本の勝ちパターンは通用しないという思いを強くする。あまり日本の国に期待せずに、自分で強くしていくことを考えたほうがよい。それには新しい「勝ちパターン」の確立が必要になる。

米大リーグのアスレチックス、ヤンキースの手法と一線を画す

早稲田大学ビジネススクール 教授 内田 和成 氏
早稲田大学ビジネススクール
教授
内田 和成 氏

 日本企業が新たな勝ちパターンを模索するうえで参考になるのは、米大リーグのオークランド・アスレチックスだ。映画「マネーボール」で一躍脚光を浴びたゼネラルマネジャー(GM)のビリー・ビーン氏は統計的に分析する手法を採用し、打率よりも出塁率のほうが得点に結びつくことを導き出した。出塁率の高い選手を重点的に獲得することで、ア・リーグの西地区で優勝争いができる球団になった。

 アスレチックスのやり方は、人気球団のヤンキースの選手獲得と一線を画した独自のものだ。企業経営も同じで、経営資源が不足しているところは業界のリーダーと同じやり方では勝つことはできない。個性を持った戦い方ができる企業が成長する。

 日本企業の中にも、すでに勝ちパターンをいち早く生み出し、成長を続ける会社はある。世界最大の自転車部品メーカーのシマノはその1社だ。自転車の完成車を一切生産せず、完成車メーカーに部品を提供する。事業規模は決して大きくないが、高級自転車を中心とした部品の世界シェアは7割に達するといわれ、「自転車業界のインテル」とも呼ばれる。

 強さの秘密は部品をシステムコンポーネント化している点にある。様々な部品を標準化し、組み合わせることで最高の性能が発揮できるように設計している。ほかの部品メーカーが単体で優れた部品を開発しても、システムコンポーネントによる優位性にはかなわない。シマノが部品のロードマップを示すことで、完成車メーカーは事業戦略を立てやすくなり、シマノの高品質のシステムコンポーネントを採用せざるを得なくなる。完成車メーカーが違っても性能差はほとんどないといわれ、完成車メーカーは形やデザインなど付加価値の向上にしのぎを削っている。

子供の反応をフィードバック、教材を改善し、5万種類に

 公文式で知られる学習塾の日本公文教育研究会も海外展開で成功している。日本を含め世界48の国と地域で教室を展開し、生徒数は世界で450万人に上る。

 公文の成功要因は日本で編み出した独自の学習支援サービスを海外でも展開していること。日本と同様、現地で採用した教室の指導者が一人ひとりの子供の学力を確認しながら、その子供に適した教材を使って個人授業をする。授業での子供の反応などを海外から日本にフィードバックし、教材を常に改善するので、その数は5万種類に及ぶといわれる。画一的な教材だと模倣されやすいが、公文の教材ではそれは難しい。

 ボストンコンサルティンググループがかつて米国で実施した調査から興味深い結果を得た。業種別に成長企業を調べてみると、成長企業の半分以上が成熟業界から生まれていることが分かった。背景には、成熟業界ではある意味、大きな成長が見込めないと思考停止に陥っていることがある。成熟業界にイノベーションを起こせば、面白いように成長できる。

 中古車買い取り業者のガリバーインターナショナルはその好例だ。それまでの中古車業界は販売に軸足を置いていたが、ガリバーは中古車の買い取りに特化した。買い取った中古車は2週間以内にオークション会場で販売業者に売りさばく。在庫コストや展示コストがかからない分だけ、他社よりも高い金額で買い取りできる。安く仕入れて高く売るという中古車業界の常識とは180度異なるビジネスモデルだった。

 成熟市場の代表格のようにいわれる衣料業界にも成長企業はある。ユニクロを展開するファーストリテイリングとしまむらの両社だ。どちらもカジュアル衣料を扱っているが、それぞれ違ったビジネスモデルで成長している。ファーストリテイリングは、企画から生産、販売までの機能を垂直統合したSPA(製造小売業)の世界大手なのに対し、しまむらは仕入れによる販売を基本に据える。

商品戦略で違い際立つ、出店も都心重視と地方重視

 両社の違いが際立つのが商品戦略。ファーストリテイリングはSPAの強みを生かし、ベーシックな定番商品を大量生産し、幅広い年代を顧客にする。それにひきかえ、しまむらは中高年の主婦層を主要顧客と位置付け、ファッション性や品揃えを重視した商品戦略をとる。しまむらが仕入れを基本にするのは流行による在庫リスクを抑えるためだ。

 出店戦略にも明らかな違いがある。ファーストリテイリングはスケールメリットを最大限に生かすため、駅や百貨店、市街地など大勢の人が集まる場所に出店する。東京23区内だけでもユニクロの店舗は87店に達する。これに対し、しまむらは地方都市や郊外に軸足を置き、東京23区内の店舗は20店にすぎない。例えば、新潟県内を見てみると、ユニクロはわずか11店にすぎないが、しまむらは35店を展開する。

 成熟市場の中で両社が共存共栄できるのはビジネスモデルが全く異なるためだ。勝ちパターンは1つとは限らない。競合他社とは違うビジネスモデルを生み出せるかどうかで今後の企業成長は大きく左右される。企業が強くなれば、国の経済にも好影響を及ぼし、日本の再浮上につながる可能性は高まる。経営者は「日本は駄目になっても、うちは生き残るぞ」というくらいの気概を持ってほしい。