PR

 「ITの進化は凄まじいものがあるのに、それを正しく理解して企業戦略に生かそうとする経営者は少ない」。ガートナー ジャパン リサーチ部門 ITインフラストラクチャ&セキュリティ バイス プレジデント 兼 最上級アナリストの亦賀忠明氏はこう語る。アマゾンやグーグルは、進化するITを最大限に活用してビジネスモデルを変革させている一方で、どこか日本の経営者は他人事のように捉えているのではと、亦賀氏は疑問を感じている。

 最先端のITにはどのような可能性があり、そしてそれらを企業戦略に生かすにはどのようにしたらよいのか。亦賀バイスプレジデントに聞いた。

(聞き手は木村 知史=日経ビジネス副編集長)

多くの経営者に対してIT導入の意義を説明していると聞いているが、反応はどのようなものか。

 もちろんIT導入に対して、正しく理解している経営者もいれば、どこまで伝わっているか疑問を感じる経営者もいる。ただ大前提として、IT、特に最先端のITについて、理解が進んでいないというのが率直な感想だ。

 経営者にとって最先端のITは分かりにくい面もある。例えば、我々ガートナーが提唱している「The Nexus of Forces(力の結節)」。これは、「クラウド」「ソーシャル」「モバイル」「インフォメーション(ビッグデータ)」といった四つの力(フォース)が融合された状態を意味しており、それがビジネスの改革に非常に重要であることを説明するが、なかなか意図が正しく伝わらない。

アマゾンはビジネスそのものがテクノロジー

写真●ガートナー ジャパンの亦賀忠明 リサーチ部門 ITインフラストラクチャ&セキュリティ バイス プレジデント 兼 最上級アナリスト
写真●ガートナー ジャパンの亦賀忠明 リサーチ部門 ITインフラストラクチャ&セキュリティ バイス プレジデント 兼 最上級アナリスト
[画像のクリックで拡大表示]

 ただ、もう少し身近な話として、ITを利用することで、大きくビジネスが変わっている事例を説明すると関心を持ってもらえる。例えば、皆が注目している米アマゾン・ドット・コム。彼らはITのテクノロジーがイコールビジネスと言っていいぐらいに、ビジネスをテクノロジーで作りこんでいる。

 現在でも、アマゾンでは欲しいものをパソコンやスマートフォンを利用してワンクリックすれば、翌日に搬送できるシステムを作りこんでいる。それには自動化が進んだ倉庫など、最先端のテクノロジーが貢献しているのは言うまでもない。

 彼らが目指しているのは、究極には注文から配達までの完全自動化システムだろう。無理だと思うかもしれないが、それを可能とする技術にもメドがついている。例えば、現在研究が盛んな自動運転カー。行き先さえ指示すれば、クルマが全自動で目的地まで運んでくれる。すでに米グーグルはネバダ州などいくつかの州で政府の許可を取り、自動運転カーを複数台走らせているのは有名な話だ。

 クルマだけでなく、飛行機や列車も自動運転の可能性はある。例えば、今や飛行機は離陸も着陸も自動で行っている。人間が操縦した方が、下手だということさえある。今のITを利用すれば、やろうと思えば何でもやれるということだ。

もちろん、アマゾンのような最先端の企業が、ITで変革を起こしているのは実感しているはず。ただあまりに先端すぎるのと、また業界が違っているので、自身に置き換えてみると現実的でないと思われてしまう。

 確かに、自分のビジネス領域で起きないと現実的でない。アマゾンに関して言えば、彼らに痛い目にあっている企業が多くある。家電量販店とか。今は、やりやすい領域でビジネスを展開しているが、今後はその領域が広がっていくのは明らかだろう。