新しい会社組織や個人の仕事のやり方を考える上での構造的な環境変化――。今回取り上げるのは「会社間の関係」です。多数の会社が関わって1つの製品の生産やプロジェクトの遂行をしていた建設業界や自動車業界、あるいはSI業界で普通だった「階層構造」においても、従来の会社間の関係が徐々に崩れ始めているところがあります。
例えば、旧来の「上の会社が面倒を見る代わりに下の会社は言うことを聞く」という上下関係ではなく、互いが対等のパートナーであるという横の関係になっていきます。この関係の変化は、個人と企業との関係にも通じるものがあるでしょう。「相互依存関係」から「自己責任」へのシフトです。
「言うことを聞く代わりに面倒を見てもらう」
旧来の伝統的な業界構造として、巨大会社を頂点とする階層型のピラミッド構造が様々な世界で見られます。最終組み立てメーカーを頂点に、大小の部品メーカーが階層的に組織され、「Tier1」「Tier2」といった表現が「会社の序列」を象徴している自動車業界――。あるいは巨大元請け会社を頂点として、下請け業者がこれも階層的に存在する建設業界やSI業界がその代表例です。
こうした業界での会社間の関係は従来、良くも悪くも「親分子分」という上下関係で成り立っていました。つまり、「親分」は「子分」の面倒を見る代わりに子分は親分の言うことを半ば無条件に聞くという服従を誓う関係です。
このような「縦の関係」では、会社間の序列も明確化され、誰も明確に口にはしませんが、「上の会社」は「下の会社」より地位も給料も「格上」で然るべしという暗黙の前提がありました。そこでは仕事の依頼は絶対で、基本的には言われた通りに仕事をすることが求められ、その代わり言うことに従っていれば一定量の仕事は保証され、「食いっぱぐれる」ことがないことを発注側も保証することが暗黙の前提となっていました。
こうした業界では大抵の場合、他社との取り引きは許されない排他的かつ閉鎖的なエコシステムが形成されるのが通例でした。