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 東京高等裁判所の結論は「賠償額の大幅減額」だった---。勘定系システムの開発失敗を巡り、スルガ銀行が日本IBMに約116億円の賠償を求めた裁判で、東京高裁は2013年9月26日、日本IBMに約42億円の支払いを命じた。

 第一審と比べると、賠償額は約4割減った。第二審判決では、賠償の義務を負う期間を狭めたためだ(図1)。両社が開発の最終合意書を交わした2005年9月末日より前の、1回目の要件定義などの費用は対象外とした。

図1●スルガ銀の賠償請求額と、第一審および第二審判決が認めた賠償額
東京高裁は、第一審判決で東京地裁が全額賠償を認めた実損害のうち、最終合意書を締結した2005年9月末以前に発生した費用の賠償を認めなかった。
図1●スルガ銀の賠償請求額と、第一審および第二審判決が認めた賠償額
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 東京高裁は、勘定系の海外製パッケージソフト「Corebank」の採用を勧めた企画・提案の段階では、日本IBMに過失があったとは言えないとした。第一審では、Corebankの邦銀業務への適合性や、適切な開発手法について日本IBMが十分に検討しなかったと認定し、スルガ銀が主張する実損害を100%賠償対象としていた。

プロマネ義務を明確化

 なぜ第一審と第二審で、日本IBMの過失について判断が分かれたのか。その理由は、システム開発におけるITベンダーの義務である「プロジェクトマネジメント義務」について、企画・提案段階での義務を、東京高裁がやや緩めに解釈した点にある(図2)。

図2●東京高裁による判決のポイント
「プロジェクトマネジメント義務」の適用範囲を明確にした。
図2●東京高裁による判決のポイント
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 東京高裁はまず、企画・提案段階でのプロマネ義務を「契約締結に向けた交渉過程における信義則に基づく、不法行為法上の義務」と定義。双方が契約を結んでいない段階でも、プロマネ義務は発生し得ることを明確にした。

 その上で東京高裁は、受注が確定していないこの段階でITベンダーに同義務を問うに当たっては、「事前検証などの方法、程度はおのずと限られる」ことを考慮に入れるべきとした。ユーザー企業についても「業務の分析とベンダーの説明を踏まえ、システム開発について自らリスク分析することが求められる」と言及した。

 判決では、開発失敗の根本原因は「Corebankの機能とスルガ銀が求める機能とのギャップが大きいことが、(要件定義などを通じて)次第に明らかになったため」と認定している。その上で、日本IBMがCorebankについて約2年間にわたって開発・検証を行った点、Corebankが後に住信SBIネット銀行に採用されている点から、Corebankを選定・提案するまでの日本IBMの行為はプロマネ義務違反に当たらないとした。

 現行の業務フローに合わせてパッケージをカスタマイズするという開発手法についても、スルガ銀が「現行システムの機能の維持」を求めていたことなどから、この段階で誤りがあったとはいえないとした。日本IBM役員は後に「当初の開発手法が不適切だった」とスルガ銀に発言しているが、これは結果責任を概括的に認めたものであって、この発言をもって企画・提案段階での義務違反は問えないとした。

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