「不確実な世界で成功できる」メソッドである「クリアクション(creaction)」を一般の人に向けて説明した本である。「成功した起業家を調査して確立したメソッド」であり「誰もが実行できる」。しかも「自分にとって大切なことを実現するまでの過程で、心構え、意欲、創造力、満足感といったものが全て豊かになる」という。それほど凄いメソッドとはどういうものか。
クリアクションはクリエイションとアクションを合わせた造語で、一言で訳すと「思い立ったら即行動」となる。まず行動し、その結果見えてきたものを生かして再び行動する。これを繰り返し協力者を増やしていく。許容できる損失の大きさだけは決めておき、そこに達したら引き返す。従来のメソッドはまず目標を決め、現状から目標に至る計画を立て、取り組みの進捗を測り、必要に応じて軌道修正するというもの。これでは不確実性が高い案件には通用しない。ただし著者が再三強調している通り、クリアクションは従来メソッドを補完するものであり「両者は共存する」のだ。
情報システムの世界の大半には従来メソッドが通じるはずだが、一度も経験がないアプリケーション開発あるいは技術導入を進める場合はどうか。著者は「基本的に見通しが立たない」ケースなら「クリアクションを用いることを考えたほうがよい」と述べる。
その際には少人数のチームが「あたかも起業家になったつもりで行動する」。つまり「持てる人脈と知識を総動員し、できるだけコストを抑える方法で全て個人的なネットワークを通じて実現する」。この取り組みを成功させるために、情報システム部門の責任者は「自由裁量権を保障することで、チームにチャンスを与え、励まし、指導し、守る」必要があると説く。
とはいえ「『即行動』とは単純過ぎないか」と思う人は多いだろう。序章を読んで首をひねった読者は1章から10章まで全て飛ばし、終章を先に読むとよい。誰もが抱く数々の疑問に対し、著者が明快に答えている。「私の働いている大企業では(クリアクションなど)うまくいかない」という疑問に対する答えが面白い。「(大企業は)さらなる成功をもたらす可能性がある限り、(あなたの提案を)即座に拒むようなことはないはずだ。却下されたとしたら、おそらくプレゼンテーションの問題だろう」。
ジャスト・スタート
レオナード・A・シュレシンジャー/チャールズ・F・キーファー/ポール・B・ブラウン 著
清水 由貴子 訳
阪急コミュニケーションズ発行
1785円(税込)