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 日本におけるIFRS(国際会計基準)導入の議論はここ数年、下火になっているように見える。きっかけとなったのは、2011年6月の自見庄三郎金融担当大臣(当時)によるIFRS強制適用の時期見直しに関する発表である。それ以来、各種メディアでもIFRSの文字を目にする機会が激減している。

 実際、東京証券取引所によると、2013年9月時点におけるIFRS任意適用会社は16社、任意適用予定の会社は5社に過ぎない。上場会社約3400社の中では、圧倒的に少数派である。

 現時点(2013年10月)でも、金融庁はIFRS強制適用時期を明確に示していない。そもそも強制適用されるかどうかさえ定かではない。「IFRS導入の検討を再び始めるのは時期尚早。強制適用に関するアナウンスが出るまで待てばよい」と考える財務経理関係者が多くいても不思議ではない。

 だが、少し待っていただきたい。2013年に入り、日本のIFRS導入に向けた動きが再び加速しはじめていることをご存じの方が多いと思う。金融庁 企業会計審議会が6月に公表した「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(以下、「当面の方針」)を受け、IFRS任意適用の要件緩和や「日本版IFRS(以下、J-IFRS)」の策定に向けた動きが本格化している。

 特にIFRS任意適用の要件緩和による影響は大きいと思われる。従来はIFRSの適用が認められていなかった、非上場企業や資本金20億円以上の海外子会社を保有しない企業も、緩和によりIFRSの任意適用が可能になる。その結果、適用可能となる企業数はこれまでの621社(2013年3月時点)から4000社超*1へと、一気に拡大する見込みである。

*1 「4000社超」は、非上場会社を含めた2012年度の有価証券報告書提出会社数(関東財務局による)。ただし、任意適用要件の緩和後にIFRSの適用が可能になるのは、現在の有価証券報告書提出会社に限らない。現在、有価証券報告書を提出していない会社も、今後の上場などによりIFRSの任意適用が可能となる見込みである。

 IFRS強制適用の方針は、決まるとしても当分先であろう。一方で後述するように、任意適用を決めた企業のほかにも、IFRSのメリットを認め、導入に向けて本格的に検討を始めた日本企業が増えつつあるのも事実である。IFRS導入のハードルが下がろうとしている現在、「IFRSは自社にどのようなメリットをもたらすか」「採用するのであれば、どのタイミングが最適か」を今一度考える時期に来ているのではないだろうか。

 この連載では、これまでの日本におけるIFRSの流れを整理した上で、今後どのような方向に向かうのか、企業はどのように対応していくべきなのかを考えていきたい。内容は以下の通り。読者の皆様がIFRS採用を今一度検討する際の一助となれば幸いである。

第1回 IFRSにまつわる日本国内の動向振り返りと今後の方向性
第2回 IFRS適用の意思決定と、適用を決めた後のアプローチ
第3回 自社に有利なIFRS適用を考える(1)共通論点
第4回 自社に有利なIFRS適用を考える(2)個別会計論点

※第2回以降は予定

 今回は初回なので、IFRSに関わる日本の動向を総括した上で、日本が採るべき方向を見ていく。