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 グローバル展開する日本企業で、“奇妙な”事例の話を聞くことが多くなった。基幹系システムについて海外拠点向けのみ統合し、国内向けはそのまま残すというパターンだ。しかも、海外向けのシステムでは業務プロセスの標準化ができているが、国内向けでは世界に背を向けるように業務プロセスはグチャグチャ、完全ガラパゴス状態のケースが多い。

 “奇妙な”と書いたが、なぜそんなことになったのかは容易に説明できる。国内向けの基幹系システムは、遠い昔にスクラッチで作ったシステムを温存したままか、ERP(統合基幹業務システム)を徹底的にカスタマイズしたもの。以前なら、そうした企業の海外拠点も、やはりグチャグチャのシステムを使っていたが、最近は大きく事情が変わった。多くの日本企業が積極的にM&A(合併・買収)に乗り出したからだ。

 買収先が欧米企業なら、ほぼ間違いなくERPを導入しており、業務プロセスの標準化もできている。そして、その企業のCIO(最高情報責任者)やIT部門は、新しいボスが何を言ってくるか身構えて待っている。ERPによる業務プロセス標準化の目的は一般管理費の削減と業務の見える化であるため、統合効果を極大化するために、普通なら親会社となった企業のやり方やシステムに片寄せされるからだ。

 ところが、彼らはすぐに驚き拍子抜けすることになる。なにせ、親会社となった日本企業に標準プロセスと呼べるものが無い。日本企業のCIOやIT部門に「今後システム統合を検討しよう」と呼び掛けられても、いったい何と統合するのだ、という話になる。

 日本企業としても、このまま放置しておくのはグローバル競争上まずいので、M&Aを機になんとかして業務プロセスの標準化やシステム統合を推進しようとする。特に海外で複数の企業を買収した場合はなおさらだ。ところが「業務プロセスを標準化しないことが企業文化」の日本企業には無理な話。それで日本の本社や国内グループ会社を置き去りにして海外子会社の間だけで標準化や統合を進めるという、外国企業から見ると理解できない話になる。

 もちろん海外だけでも標準化や統合ができた企業はまだ良いほうで、子会社化した海外企業に口出しできず、お手上げ状態の日本企業は数多い。ならば、いっそのことM&Aを機に買収先の企業のCIOを本社CIOに抜擢し、買収先のIT部門に本社のIT部門の権限を大幅に委譲してはどうか。そうでもしないと、グローバル競争で日本企業が後手を引き続けることになる。

 とうの昔にERP導入により業務プロセスの標準化を実現した欧米のグローバル企業の多くは、効率化を極限まで高めた結果、同業の日本企業に比べ高い利益率をたたき出している。さらに新興国の企業も欧米企業流のERP活用を推し進めている。例えば米国でいろいろと摩擦を引き起こしている中国の大手通信機器メーカーのファーウェイもオラクルの自慢のユーザー企業。ERPを導入することで、先進国の企業の標準業務プロセスを一気に手に入れた。

 そんなわけで、日本企業は「標準化しない企業文化」を一刻も早く打破する必要がある。欧米企業並みの経営の強いリーダーシップが前提だが、そのための指令塔となるCIOやIT部門には違う文化を取り入れたほうがよい。利用部門がIT部門に要求を出す際の“公用語”は英語になるので、標準化に逆行するムチャな要求も少なくなると思うが。