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 ITベンダーの皆さんにおうかがいするが、「Google Glass」などのウェアラブル端末の消費者への普及を前提に、何らかの企業向けソリューションの検討を始めているだろうか。「えっ、まだ海の物とも山の物ともつかないじゃない」とか、「あんな物、売れないよ」とか言っているようではダメである。ビジネス感覚がなっていない。このままでは感覚の鋭いユーザー企業に相手にされなくなるだろう。

 もちろんウェアラブル端末の個々の製品は、まだ海の物とも山の物ともつかない。随分前から日本企業も含め、結構な数の企業が製品化しているが、いまだに成功した話も聞かない。ただ、今やウェアラブル端末は、クラウドの存在を前提にした「PCからスマートフォン、そしてあらゆる端末へ」のトレンドの最先端にいる。しかも後で書くが、Google Glassは、ある理由から本当に成功するかもしれないのだ。

 実は少し前に、大手コンビニエンスストアのCIO(最高情報責任者)に取材をした時、ウェアラブル端末の話になった。CIOによると、既にIT部門の若手技術者が業務の合間にGoogle Glassを研究しているそうだ。「なぜGoogle Glassを今から研究するのですか」と私がバカな質問をすると、「だって、普及してから慌てて対応サービスを検討しているようでは、手遅れになりますからね」とそのCIOは答えた。

 ITをビジネスの武器としてフル活用している小売りだけのことはある。トレンドを先読みして、自社のビジネスに生かそうとする姿勢はさすがである。たとえGoogle Glassが普及しなくても、Google Glass向けに検討したサービスはポスト・スマホ時代の新端末向けにも応用できるだろう。

 そんなわけだから、「まだ海の物とも山の物ともつかないじゃない」と言っているITベンダーは何をしているのかという話になる。まさに、普及してから慌てて対応ソリューションを検討しても全くの手遅れで、コンビニのような先進ユーザー企業からは相手にされないだろう。このままでは間違いなく、ウェアラブル端末向けのアプリケーションやソリューションでも、ベンチャー企業や米国ベンダーが市場をリードすることになる。

 さて、Google Glassが商品化された場合、成功するかもしれないと思う根拠は、前提となるクラウドサービスが成熟したことやグーグルの知名度に加え、そのマーケティングの“厚かましさ”である。「Google Glassはプライバシーを侵害する恐れがある」との懸念を世界中で巻き起こして注目を一身に集める手法は、さすがグーグルと言わざるを得ない。

 ウェアラブル端末の中でも、特にGoogle Glassのようなヘッドマウントディスプレーは、いくつかの日本企業が既に製品化している。こうしたヘッドマウントディスプレーは、世界的にも人気があるアニメ『ドラゴンボール』に登場する「スカウター」そのものである。私としては、日本企業にこそ「クールジャパン」の波に乗って、現実化したスカウターとして世界に普及させてほしかった。だが、先行した日本企業の製品は、企業向けの狭い市場しか考えていなかったようだ。

 ならば少なくとも、ソフトウエアやサービスの分野では、日本のITベンダーにもポスト・スマホのキープレーヤーとして頑張ってもらいたいと思う。だが、「あんな物、売れないよ」とすましているようでは、本当にダメである。