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 今回は、来たるべきサイバー社会の中で、個人が生き残るための心構えについて考えてみる。未来の話は具体性が乏しいためイメージがわきにくいものだが、日本の近い未来に設定された「大きな目標」を念頭にサイバー社会の在り方を考えるとわかりやすくなるはずだ。大きな目標とは、2020年の東京オリンピックのことだ。


 本連載の第2話でも述べたが、私はサイバーセキュリティを取り巻く環境は、2005年ごろから一気に様変わりしたと感じている。このころからインターネットを介した攻撃は、当時を境に愉快犯的なサイバー攻撃やコンピュータウイルスだけでなくなり、金銭など攻撃者の具体的な目的を達成するために変化した。

 インターネット利用は1990年代に一般に広がり始めたが、しばらくは先進ユーザーの利用にとどまっていた。2005年ころにインターネットは一般の利用者への普及、とりわけショッピングなどの具体的な経済活動へと浸透した。そしてこの状況に拍車をかけた契機になったのは、2008年に日本で発売されたiPhoneだろう。

 その翌年以降、携帯電話会社各社がAndroidスマートフォンを発売し、次第にシェアを拡大していった。この動きと同時にFacebookやLINEに代表されるソーシャルメディアが急速に普及し、瞬く間にインターネットを一般ユーザーにとっての身近な道具に変えてしまった。そう考えると、2005年から8年で様々なことが変わったといっても過言ではない。

 残念なことだが、ここに犯罪者が目を付けたということは、ある面「社会」の一部としてサイバー空間が認められたということである。

2030年までにやってくる未曾有の大変革

 2005年にこの世を去った経営学者のピーター・ドラッカーは、存命中に進行していた「IT革命」について、「ネクスト・ソサエティ」や「プロフェッショナルの条件」といった著書で触れている。そこではIT革命を評価しつつも、「まだ革命の本質には至っていない。産業革命に例えるなら前半を経験しているに過ぎない」と指摘していた。

 ドラッカーは1998年に設立され、新しい販売形態を作りつつあったオンライン書店のアマゾン・ドット・コムについては評価していた。その一方で、2005年以降に登場したスマートフォン、ソーシャルメディア、クラウド、ビッグデータなど、様式を変革するものは見てない。それでも「現在の変革は、概ね2030年くらいに一区切りを迎えるのではないか」との見通しを述べていた。