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 基幹システムの再構築案件で、現行システムのSIベンダーA社がコンペで新参のB社に負けた。A社にとってはもちろん悔しい結果だろうが、コンペで負けた後のフォローをどうするかによってそのベンダーの本当の姿が分かる。残念ながらこのA社は敗戦後に疑問を持たざるを得ない対応を繰り返し、ユーザー企業の信頼を完全に失ってしまった。

 A社は現行システムの保守サービス契約を結んでいるので、新システムがカットオーバーして現行システムが使われなくなるまで契約は続く。しかし、A社は露骨に保守サービスに対して手抜きをするようになった。定期的に開催していた保守報告会議は開かなくなり、システムトラブルが発生した際の対応が明らかに悪くなった。

 また、それまでA社主催のユーザー会やセミナーがあると営業担当者から頻繁に招待の声掛けがあったのだが、一切それらの情報提供がされなくなった。A社のホームページの事例紹介に載せる際は「ぜひとも御社の事例を使わせてほしい」と熱心に頼み込んできたのに、気が付いたら連絡もなくホームページから削除してあった。

 これらの対応から推測されるA社担当者の考えはこんな感じだろうか。「これまで面倒をみてきたのに、随意契約ではなくコンペを開催し、揚げ句にウチを落とすとは…。恥をかかされた。もうこれ以上この会社からはカネを取ることはできないだろうから、営業やサービスに時間を掛けても無駄なだけだ」。

 一方でユーザー企業の担当者はどういう心境だったのだろうか。これはある担当者の言葉である。「現行システムにおけるA社のサービスは必ずしも満足のいくものではなかった。だからといって、他社に変えることを目的にコンペを実施したのではない。コンペは実施したものの、A社が勝つだろうと思っていた。ところが客観的な評価プロセスで審査したところ、B社が上回った。本音を言うとB社に変える決断は非常に迷った。A社は当社の内情を知っているし、これまでの付き合いもある。基幹システムはB社に頼むことになっても、今後も相談相手としてA社には期待していた。しかし、コンペ後の対応の悪さにはあきれてしまった。保守契約の期間中にあの対応はあり得ない。今ではコンペでA社を落として正解だったと思う」。

 A社は大手のSIベンダーである。同社のホームページは洗練されており、そこには「お客様の満足が一番大事」「身近なパートナーとして」「こころを込めたサービス」といった言葉が並んでいる。社長の挨拶文も「お客様が第一」を強調している。おそらくA社全体が悪いわけではなく、この事例の担当者や部署の対応がたまたまお粗末だったと思いたいし、実際にそうであろう。しかし、このようなことを見聞きすると、「お客様第一」を訴える美辞麗句が何とも空しい。

 SIベンダーは「顧客満足、お客様第一」という言葉が大好きだ。A社に限らずほとんどの会社がこの言葉を使っている。しかし、本当に実践しているだろうか。ユーザーの思いとギャップのある行動を取っていないだろうか。一度振り返ってみてはどうだろう。

永井 昭弘(ながい あきひろ)
イントリーグ代表取締役社長兼CEO、NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て、ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画、96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング、RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」「事例で学ぶRFP作成術 実践マニュアル」(共に日経BP社)など