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 連載第4回「プロセスとは何か」で解説したように、適切なプロセスを設計および体系化し、共有することで、個人の能力だけでなく組織の能力も高められます。それは蓄積された経験とノウハウを再利用しやすくなるからです。

 P.F.ドラッカーは、著書「創造する経営者」(ダイヤモンド社)の中で次のように述べています。

 伝承を知識にまとめ、思考を体系にまとめることは、人間の能力を卑しめてマニュアルに置き換えることと誤解されがちである。もちろん、そのような試みは、ばかげている。しかし、体系的な知識は、きょうの医者に対し、一〇〇年前の最も有能な医師以上の能力を与え、今日の優れた医師に、昨日の医学の天才が想像もしなかった能力を与える。
 いかなる体系も、人間の腕そのものを伸ばすことはできない。しかし、体系は、先人の力を借りて常人を助ける。常人に対し、成果を上げる能力を与える。有能な人間に卓越性を与える。

 先人が学び、試行錯誤して得た貴重な知識も、記録および体系化されなければ埋もれていってしまいます。我々が5年かかって得た経験や知識を、我々の後の世代では2、3年で習得できるようにする。そうしなければ、組織も社会も発展することはできません。設計されたプロセスを共有し、さらに洗練していく。このことによって、私たちはこれまでの蓄積の上にさらに工夫を重ねていくことが可能となります。

 こうした観点から、エンジニアリングプロセスやプロジェクトマネジメントプロセスと同じように、現場のプロジェクトマネジャーやリーダーにぜひ知ってもらいたいプロセスが、「意思決定プロセス」です。

優れたマネジャーは意思決定のプロセスを持っている

 プロジェクトをマネジメントする立場にある人が、その力量を最も試されるのは「意思決定」(デシジョン・メイキング)の場面です。特に、想定外の問題が起こったときや突発的なトラブルが発生したとき、的確な判断に基づき迅速に意思決定を行えなければ、プロジェクトにダメージを与えるのみならず、会社や組織に大きなダメージを与えてしまうことすらあります。

 プロジェクトの現場では、いかに綿密に計画を立ててモニタリングしていても、問題は必ず発生します。問題から目を背けたり逃げようとしたりすれば、逆に問題から攻撃されます。プロジェクトマネジャーは、「問題は起こるもの」と認識して正面から立ち向かわなければなりません。