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 少し前まで「米国では企業がITを戦略的に活用し……」なんて話をすると、シニカルな人から「アメリカ出羽守(アメリカでは、のかみ)」と揶揄されたものである。まるで全てを見てきたような顔をして、「米国では」「米国では」と上から目線で連呼する俗物に見えるらしい。特に経営者はアメリカ出羽守を嫌う人が多かった。以前ある経営者にインタビューしたとき、その企業のシステム部長に「うちの社長は『米国』と『IT』が嫌いですから」と釘を刺されたこともあった。

 そんなわけで私は長く、アメリカ出羽守にならないように言葉を慎んできた。ところがである。この「極言暴論」の過去記事を読み返してみると、「米国では」「米国企業では」のオンパレード。彼方の事例を拠り所に、日本企業のシステムやIT部門の状況をバッサリと切り捨てる。まさにアメリカ出羽守そのものである。これではマズイと思ったので、今回は日本の中堅・中小企業のIT活用を引き合いに、大企業のシステムの奇妙さを浮き彫りにしてみたいと思う。

 実は、大企業に比べ経営規模の小さな企業は、IT活用のレベルがグローバル水準に達しているところが多い。大企業のIT部門のシニア世代には「中堅・中小企業はITリソースが足らず、ITリテラシーも低い」と勝手に思い込んでいる人が多いが、むしろ大手企業よりもIT活用で先を行っている企業が多いのだ。

 「そういう企業は、よく雑誌に登場するようなIT好きの社長がいて、無駄にITにカネをつぎ込んでいるだけじゃないの」との声が聞こえてきそうだが、それは違う。普通にすごいのだ。そうした企業では、会計システムなどの基幹系システム(私流に言えば「間接業務支援システム」だが)は、パッケージ製品を可能な限りカスタマイズ無しで使う。そして自分たちのビジネスのコア領域では、ハードウエアを含めシステムを内製し競争力の強化を図っているのだ。