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 前回の無人爆撃機をモチーフにした「Dronestagram」の殺伐としたデジタルな雰囲気と一変して、今回は「アナログ」に見える作品を紹介する。

アート部門 新人賞「Maquila Region 4」Amor MUNOZ(メキシコ)

 文化庁メディア芸術祭でアート部門新人賞を受賞した「Maquila Region 4」を見ると、刺しゅうで電子回路を縫ったものだというところまではすぐ分かる。

 それで「デジタルな電子回路をアナログな手作業で表現したのか。女性らしい暖かみのある作品だな」と思うかもしれない。ところが、この作品の価値はもっと奥深いところにある。メキシコの貧困や世界の格差問題をインターネットで共有するという社会性の高い作品だ。

 作者のMunoz氏はメキシコ生まれ。受賞者講演では「英語でスピーチするなんて初めてで緊張しちゃう!」と興奮しているのがありありと見えた(写真1)。

写真1●文化庁メディア芸術祭受賞者講演に臨むAmor Munoz氏
写真1●文化庁メディア芸術祭受賞者講演に臨むAmor Munoz氏
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 それでも言葉を一生懸命探しながら伝えようとしていた姿が印象的だった。彼女は法律のほかビジュアルアートも学んだ経歴があるせいか、社会性のあるアート作品へと実を結んだのかもしれない。

 会場に展示されていた作品はランチョンマットサイズの布に電子回路が刺しゅうしてあるものだった。「ここを押してください」というところを押すと音が鳴る。電子回路の模様を縫っただけではなく、電子回路として成立している。それは通電性のある糸で縫っていることと、基板に搭載する電子部品も一緒に縫い込んでいるからだ。

写真2●電子回路としても成立している刺しゅうの作品
写真2●電子回路としても成立している刺しゅうの作品
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