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 米Googleや米IBMなど、米国のIT企業は自社の成長エンジン、新規事業創出などのためにM&Aによってベンチャー企業を積極的に自社に取り込んでる。一方、日本ではそもそもM&Aが少ない。この理由の一つとして、会計制度におけるのれん代の償却の違いを指摘したのが、富士通総研 経済研究所 主任研究員の湯川抗氏だ(インタビュー記事)。湯川氏と公認会計士の木村直人氏が執筆した研究レポート「我が国におけるベンチャー企業のM&A増加に向けた提言- のれん代非償却化の重大なインパクト」は、国の政策にも影響を与えている。湯川氏にその論点についてITproに寄稿してもらった(編集部)。


 一般にベンチャー企業は、新規株式公開(IPO)あるいはM&A(合併と買収)を通じて、投資家に対してキャピタルゲインをもたらす。これらはイグジット(Exit)と呼ばれ、Exitに関する計画がなければベンチャー企業は投資を受けること自体が困難になる。ベンチャー企業の経営陣は事業を成長させるために「Exit Plan」、つまり将来的にIPO、M&Aのどちらを目指すのかを明確にすることが求められる。

 図1は2008年から2012年までの間に米国においてベンチャーキャピタル(VC)が投資したベンチャー企業のExitの件数を、IPOとM&Aに分けて示したものである。2009年はリーマンショックに端を発する不況のため、M&Aの件数は少ないものの、それ以外は、毎年400件を超えるM&Aが成立しており、例年IPOを大幅に上回るExitをベンチャー企業に供給している。また、金額でみてもM&Aは毎年IPOを大きく上回っている。

図1●米国におけるIPOとM&Aの推移 出所:Thomson Reutersのプレスリリースを基に筆者作成
図1●米国におけるIPOとM&Aの推移
出所:Thomson Reutersのプレスリリースを基に筆者作成
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 こうした米国のデータと完全に比較可能な日本におけるベンチャー企業のExitに関するデータは存在しないが、日本では毎年Exitの手段としてはベンチャー企業がIPOに至って初めて投資家にリターンが生まれるケースが多い。実質的にはベンチャー企業のExitの手段としてはIPOしか存在していないと考えてよいだろう。このことはベンチャー企業のエコシステム全体の発展を阻害する最大の要因といえよう。