メーカーは説明責任を果たしているのか
2011年4月には、アップルとグーグルが携帯電話から利用者の位置情報自動収集をしているという報道があった(関連記事)。
これらは恐らく、利用者へのサービスや品質の向上を目的として実施されていたと考えられている。ただしこの報道があってから、メーカーなどが利用者の情報を収集する場合には、適切な説明責任を果たすことが求められるようになってきた。
こうした経緯があるだけに、今回のバックドアの報道は、まったく別の側面を持っているかもしれないと私は考えている。つまり、メーカーが説明責任を果たしていないといった指摘とは別のところに問題があったのではないかという推測である。
あくまで推測であるが、今回の件はチップそのものに「親切でついていた機能」だったという仮説はどうだろうか。つまり汎用的なアプリケーションプロセッサに機能として組み込まれていたが、製品として組み上げた際にこうした機能を使う予定がなかったため、ユーザーに対して説明をしていなかったという推測である。
小さなスマートフォンでも、部品一つひとつがひと昔前ならとんでもない機能を実現する「装置」となっている。その装置の中に残され、関係者が忘れ去っていた未使用の機能の存在を、件の開発者は発見したのかもしれない。こうした機能を見つける側の労力は、遺跡探しのように大変なものとなる。だからこそ、これまで誰も見つけられず、見つかったときに大きな問題となる。
もしこの見立てが正しいなら、これはあらゆる電子製品でも発生する問題といえる。供給者側は様々な要求に耐えられるように多様な機能を搭載し、汎用的に利用できる部品を提供する。製品として組み上げる側はその中で利用する機能のみに注意を払う。その結果として例えば、遠隔操作などの危険な機能でも未使用なら、ユーザーへ説明をしないどころか、製品開発者さえもその存在を知らないことがあり得るのではないだろうか。