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 万人の知的好奇心をそそる古典的問題は、一見シンプルで子供でも意味が分かるようなものでありながら奥が深く、そこからどこまでも考えさせるという類のものである。モンティ・ホール問題がまさにそれだ。モンティ・ホールは米国のテレビ番組の司会者の名前で、同問題はニューヨークタイムズの1面をにぎわすほど物議を醸した。

 全く同一の扉が三つ提示される。二つの裏には山羊がいて、一つの裏には車がある。挑戦者は扉を一つ選ぶ。次に選ばれなかった扉のうちの一方(必ず山羊のいる方)をモンティが開ける。そこでモンティは、扉を変更するかどうかを選ぶ機会を挑戦者に与える。「車を賞品として獲得するには、変えるのと変えないのとどちらがよいか?」。

 大多数の人の直感に反して「正解」は、変えた方が車を当てる確率が2倍大きくなるというものである。

 本書のタイトルを見て驚いたのは、「このテーマだけで一冊?」ということだった。身近な確率論を扱った本なら数ページを割く程度のテーマだが、それだけで一冊にしてしまったところが本書の特徴である。

 確率論を学ぶ意義の一つは、「直感がいかにアテにならないか」を自覚することだ。同じような問題に「誕生日問題」がある。「誕生日が同じ生徒がいる確率が2分の1を超えるのは、1クラス何人以上の場合か?」。答えは「直感」よりはるかに少ない23人である。

 モンティ・ホール問題も、直感がアテにならないという点では同じだが、決定的に違うのは、正解を示された後もなお「そんなはずはあり得ない」と、ときには数学の専門家でさえも納得ができないところにある。

 本書ではそんな奥深い問題を数学だけでなく心理学や認知科学などに踏み込むとともに、モンティが車の有無に関わらず扉を開けたら、扉が4枚以上だったら、といった派生問題を紹介して様々な角度から究明していく。

 本書に数式は多少出てくるものの、基本的な割り算と掛け算がほとんどだから、数式アレルギーのある人も十分ついていけるだろう。知的好奇心が旺盛な人に、お薦めの一冊である。

 評者 細谷 功(ほそや・いさお)
ビジネスコンサルタント。組織、業務プロセス、ICTや製品開発などのコンサルティング経験を経て、現在は思考力や組織論などの著作や研修・講演活動に従事する。
モンティ・ホール問題


モンティ・ホール問題
ジェイソン・ローゼンハウス 著
松浦 俊輔 訳
青土社発行
2808円(税込)