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Wi-Fiでの位置特定では誤検知避けられず

 アクセスポイントを増設する選択肢も考えられる。だが、成田エクスプレスなどの有料特急とは異なり、山手線では非常に狭い範囲に多数の乗客が集中する。十分な情報配信を行うには、アクセスポイントをいくら増設しても足りない。

 山手線固有の事情もあった。同線は短距離・短時間の乗客が多く、全線が地上部を走る。携帯電話事業者(キャリア)が競うように基地局を整備しているエリアでもある。JR東日本が独自にインターネット接続サービスを提供する必要性は低い。

 山手線トレインネットの本来の目的は、乗客にきめ細かな情報を提供することである。しかも、どこでも得られる情報ではなく、列車が走っている場所や200m以上ある長さの列車の中のどの号車(車両)に乗っているかを判別することが要件である。

 この点でもWi-Fiには難があった。Wi-Fiの電波は仕様上20mほどの範囲に届くが、さまざまな環境によって電波の到達距離は異なる。実証実験では、「2号車にいる乗客が、電波を拾えず号車を判別できない」「2号車にいるのに、4号車から漏れてきた電波を拾って誤検知する」(松本氏)といった現象が頻発した。

Bluetooth Low Energyは普及度に難

 JR東日本は、目的を達成するにはWi-Fi以外の位置特定技術を探す必要があると考えた。だが代わりを探すのは簡単ではなかった。「直前までかなり悩んだ」(松本氏)という。

 候補の一つに、「Bluetooth Low Energy」(BLE、米AppleのiOS 7では「iBeacon」として実装)が挙がった。だが、「端末の普及率が低い」「アプリからオン/オフを制御しにくい」「Wi-Fiと同じ周波数帯の電波を使っており、Wi-Fiと同様の電波漏洩が発生する可能性が高い」といった問題があり、採用には至らなかった。