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 世界の大手が消滅するなど、航空業界の競争激化は際立っている。ライバル他社と差異化し、生き残るためにIT(情報技術)をどう使いこなすべきか。全日本空輸の幸重孝典上席執行役員業務プロセス改革室長とITリサーチ最大手、ガートナー ジャパンの日高信彦代表取締役社長が語り合った。

 幸重室長は「コンシューマー向けのタブレット、インターネット、モバイル、それからクラウドコンピューティングの動向を見て、会社として取り入れられるものはどんどん取り入れていく」と語る。

(構成は谷島宣之=日経BPビジョナリー経営研究所研究員
中村建助=ITpro編集長)


日高:11月1日に新しいLCC(格安航空会社)、バニラ・エアが誕生して年内に運航が始まりますね。楽しみにしています。幸重さんのご苦労は増えるのかもしれませんが。

幸重:今回、より日本に合ったLCCにしようということで、マレーシアの航空会社エアアジアとやってきた共同事業を解消し、ANAホールディングス100%出資のLCCにして、ANAが全面的に支援することになりました。

幸重孝典・全日本空輸 上席執行役員 業務プロセス改革室長(右)と日高信彦・ガートナー ジャパン 代表取締役社長
幸重孝典・全日本空輸 上席執行役員 業務プロセス改革室長(右)と日高信彦・ガートナー ジャパン 代表取締役社長(写真:的野 弘路、以下同)

 我々、IT(情報技術)の部門も全面支援して、日本に合ったサービスを提供でき、成功できるビジネスモデルを作っていきたいと考えています。これまでITはエアアジアのものを使っていましたので、我々がかかわる形ではありませんでした。

日高:LCCのように、航空ビジネスにすぐ参入できる背景にはITの進化がありますね。

幸重:ええ。LCCもそうですし、中東の湾岸にある航空会社が、スポットライトを浴びています。飛行機は最新のものを調達する。ITは既にあるシステムを借りて用意する。

 このようなやり方で、後から入ってきたLCCや湾岸の航空会社がジャンプアップして、最新の機材と最新のITを一気に備えることができます。既存の航空会社にとって脅威になっているのは間違いないと思います。

ITがないと航空ビジネスは成り立たない

日高:LCCを含めた低価格化をはじめ、エアラインほど大きく変化した業界はそうはないですね。国際化、経営統合、もちろんサービスの競争もありますし。

 今日はビジネスとITというテーマでお伺いします。まず、激変する航空業界の中でITはどういう役割を果たしてきたのか、その辺りからお教えください。

幸重:飛行機がないと航空会社は成立しないですが、ITがなくても航空ビジネスは成り立たないでしょう。よく金融業界が引き合いに出されますが、航空業界でも同じくらいITが重要です。

 そもそも大型の汎用コンピューターは、アメリカン航空の経営トップとIBMのトップが飛行機で一緒になった時に話が出て作られたものだ、というエピソードを若い頃聞いたこともあります。

 ただITの役割はだいぶ変わってきています。もともと航空ビジネスは労働集約型のサービス業ですので、それを効率化することや商流を整えるための利用が以前は中心でした。

 今はインターネットが世の中を変えていく動きがあります。こうした動きに合わせたお客様向けのサービスを充実させるためのIT利活用が、航空業界を変えていく要因になってきています。

 LCCにANAグループとして取り組む話が出ましたが、世界中の航空会社は皆、LCCについて悩んでいます。国によっては、LCCが大手の航空会社を買収した例も出てきています。

 生き残っていくカギは、基本的なことですが付加価値と価格です。そこでお客様の評価をどう得ていくのかを今まで以上に考えていく必要があります。