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 このほか、「スタートレック・メディシン」と呼んでいる医療機器の研究プロジェクトも興味深い。電磁波を当てると特殊な振る舞いをする「メタマテリアル」と呼ぶ先端素材を用いて、身体の特定部位をセンシングしたり、撮像したり、病気を治療したりできる機器だ。SFドラマのスタートレックに出てくるような、手術をしなくてもボタンを押すだけで病気を治療できる技術の確立を目指している。私は楽天家なので、10年、20年の期間で実現できると見る。

 メタマテリアルはエキサイティングな分野で、IV社は開拓者だと自負している。無線通信用のアンテナのような、より実現時期が近い研究も手掛けている。こうしたアイデアは、社内で定期的に開く「発明セッション」という取り組みの中から生まれることが多い。さまざまな分野の研究者がアイデアを出し合う学際的なアプローチのブレーンストーミングである。

同じ技術でも世界的視点では異なる課題を抱えている

 いずれも突飛な内容の研究テーマに見えるかもしれない。恐らく、一般的な企業では積極的に投資することが難しいテーマだ。しかし、社会的には重要な研究テーマである。多様な技術のポートフォリオを構築し、それに対して投資を募る枠組みと、我慢強い投資家の存在が長期視点での研究の取り組みを可能にしている。害虫駆除システムの研究を支援しているのは、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏が立ち上げたゲイツ財団である。

グローバル・グッドによる発明の一つ「パッシブ・ワクチン・ス トレージ・デバイス」。ワクチンを適温で1カ月間保管でき、持ち運ぶことが可能だ
グローバル・グッドによる発明の一つ「パッシブ・ワクチン・ス トレージ・デバイス」。ワクチンを適温で1カ月間保管でき、持ち運ぶことが可能だ
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 スマホのアプリやウェブサービスで億万長者になることもできる。だが、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は人の命を救わない。

 これまで多くの技術開発は、先進国を中心とする裕福な人々のためのツールを作ってきた。世界的に見れば、20億人規模の人々が1日当たり1~2米ドルで生活している。歴史的に見て、こうした人々に開発者が目を向けることはなかった。IV社は、新興国の貧困層向けの研究プロジェクトを「グローバル・グッド」と呼んでいる。