PR

 「文章」はその文章が使われる状況によって位置づけが変わります。本書で扱う「文章」は、ソフトウエア開発に伴う文章です。もう少し具体的に示しますと、第1回で示した「ソフトウエア関連工程一覧」に列挙された工程に伴う文章を意味します。

 ソフトウエア文章の本質は技術文章の一つであるということです。従って技術文章について理解することがソフトウエア文章を理解することに繋がります。

 では、そもそもソフトウエア文章とは何でしょうか。そしてどのような位置づけにあるのでしょうか。まずは、そのことについて大筋を説明します。ここで説明することが理解できれば文章力を鍛える道筋についても自ずと分かるようになるでしょう。

語彙力と文法が文章を支える

図
図●文章の階層構造
[画像のクリックで拡大表示]

 技術文章とは何かを説明するだけで、一冊の本になってしまいます。ここでは技術文章とは、「設計書・仕様書・企画書・研究報告書・事故報告書・研究論文・マニュアルなどである」という理解で十分でしょう。

 技術文章を書くためにはテクニカルライティングという技術が必須になります。英語圏では技術系の学問であればこのテクニカルライティングの講義が1カ月ほど実施されます。一方、日本の大学ではこれを教えているところが案外少ないのです。

 技術文章を十全と書くためにはその土台として仕事文を書ける文章力が不可欠です。仕事文とは報告書や計画書など仕事上で書かれる文章のことです。さらに仕事文を書くためには生活文が書ける必要があります。生活文とは手紙とか日記を指します。これらの文章を根底から支えているのが語彙力と文法なのです。従って語彙力が十分にあって日本語文法が分かって使いこなせることが基本中の基本になります。

 ここで理解していただきたいことは一足飛びにソフトウエア文章に取り組むわけにはいかないということです。基礎体力をしっかりと身につけて一つ一つ階段を上がるように地道な訓練が必要なのです。

 これを間違うと「五分で分かる仕様書の書き方」などと題した本に飛びつく羽目になりかねません。この事を風月花伝書をしたためた世阿弥は「守・破・離」にあると見極めました。「守」とは基本のこと。ソフトウエア文章の場合は語彙力と文法です。「破」は基本を改善すること。「離」とは自分独自の方法論を構築することです。世阿弥は「能」の人です。「能」は日本伝統芸能の一端を照らす芸術の一つです。そこにあっても世阿弥は基本が大切だと言い切っています。SEにとっても基本無くして大きな成長は得られないでしょう。