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磁束量子パラメトロン

 D-Waveマシンで量子ビットの信号を増幅する働きを担っている超伝導回路の「磁束量子パラメトロン(QFP)」。QFPは2005年に逝去した東京大学の後藤英一教授が、1991年に発明した。

原田 豊 氏
写真4●原田 豊 氏
現:国士舘大学 理工学研究所 教授
故・後藤英一博士(東京大学教授)の研究チーム(東京大学と日立製作所の共同研究)や東京大学の後藤研究室で磁束量子パラメトロンの開発に参加した原田豊氏(当時の所属は日立製作所)、細谷睦氏(同東京大学、中段)、須田礼仁氏(同東京大学、下)
細谷 睦 氏
写真5●細谷 睦 氏
現:日立製作所 横浜研究所 主管研究員
須田 礼仁 氏
写真6●須田 礼仁 氏
現:東京大学 情報理工学系研究科副研究科長 教授

 後藤教授は1990年代に、QFPを解説する書籍を英語で数冊出版している。D-Waveのヒルトン氏は「後藤氏の著書から学んで超伝導回路を開発した」と明かす。

 QFPは、東京大学と日立製作所の共同研究プロジェクトで生まれた。日立側のメンバーだった原田豊氏(写真4)は、「超伝導回路を使ってスーパーコンピュータ用プロセッサを開発しようと考えていた」と語る。

 当時、メインフレームで使われていたバイポーラプロセッサは性能向上の限界に達し、次世代と目されていたCMOSプロセッサは性能がなかなか向上していなかった。これらに替わる選択肢として超伝導回路であるQFPに期待がかかったという。しかしその後、CMOSの性能が向上したため、QFPはプロセッサとして日の目を見なかった。

 細谷睦氏(写真5)と須田礼仁氏(写真6)は、東京大学の後藤研究室の学生としてQFPの開発に参加した。細谷氏は「後藤先生は大学の教授というより発明家だった」と振り返る。後藤教授は1954年に「パラメトロン」という日本独自の論理素子を発明した。NECや日立が初めて開発したコンピュータは、論理素子にトランジスターではなくパラメトロンを使っていた。後藤教授は量子コンピュータだけでなく、日本のコンピュータ産業そのものの生みの親でもあるのだ。

 「1980年代後半、後藤先生をはじめとする様々な研究者が、CMOS以外の新しい発想のプロセッサを作ろうとしていた。D-Waveは当時の試みを復活させたといえるかもしれない」。後藤教授の東大での最後の弟子に当たる須田氏はそう語る。