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 この結果、当初はスピードや小型化だけを重視するニッチな市場で採用される。その後、技術進歩の伸び率が高ければ、トレードオフが解消されて適応範囲が広がり、より広範な市場で普及していく。もちろん、新しい技術がすべてそうなるとは限らず、ニッチ市場向けにとどまる技術も多い。

 トレードオフを解消する技術進歩は、どれだけの技術的リソースがインプットされるかにかかっている。3Dプリンターは1980年代から研究されてきたが、2000年代後半からこの5年ほどで、かなりのリソースがつぎ込まれているという。

2020年には全世界で20兆円の経済波及効果

 新宅氏によると、3Dプリンターの普及には2つの方向がある。ひとつはものづくりのプロフェッショナルに向けた「精密な工作機械(付加製造装置)」、もうひとつは個人も含めた幅広い主体にとっての「ものづくりツール」である。

 前者の「精密な工作機械」としての3Dプリンターは、試作・設計工程の期間短縮などで「ものづくりプロセスの革新」をもたらす。「従来は1カ月ぐらいかかっていた試作品がその日のうちに作れるようになれば、これまで絞って絞って狙い打ちで試作していたのが、いろんなものを試作してみようということになる」(新宅氏)。このほか、複雑な形状が簡単に作れる、カスタマイズが簡単になるといった「プロダクトの革新」も実現する。「人工骨を患者ごとに安価にカスタマイズするといった使い方が考えられる」(同)。

 後者の個人を含めた幅広い主体の「ものづくりツール」としての3Dプリンターは、個人が自分のアイデアを簡単に実体化するために利用できる。新宅氏はその実例として、看護師が開発した、包帯用テープカッターなどを紹介した。

 ただし、3Dプリンターは「精密な工作機械」として決して万能ではない。基本的に一品生産に適した装置であり、一定数量以上の量産では金型を用いる従来工法に比べて、時間・コストの両面で劣る。新宅氏が座長を務める経済産業省の新ものづくり研究会は、こうした特性を踏まえたうえで、3Dプリンターの付加製造技術での経済波及効果を「2020年時点では全世界で20兆円ぐらいと積算している」(新宅氏)という(同研究会の報告書)。