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ウォンツから生まれたモバイルファースト

 モバイルファーストという言葉が提唱されて4年ほどがたちました。急激に普及したスマートフォンの当時のスペックである“PCに比べて限られた画面サイズ・貧弱なCPU・回線スピード”と、PCには無い魅力“いつでもどこにでも持ち運べ、気軽にアクセスできる速報性”を活かした情報発信のあり方を再考しようと生まれたのがモバイルファーストです。

 その手法としては、従来のPC版からのスタートではなく、まずは必要十分な機能を備えたモバイル版をつくり、プラスアルファとして必要に応じてPC版に付加機能を実装すればいいというモデルでした。

 モバイルファーストはAppleやGoogle、Adobe、Facebookといった海外のビックプレーヤーが賛同したことから国内でも大きなトレンドとなりました。なぜモバイルファーストが注目されたのでしょう。その答えはシンプルです。

 「PC用に作られたものはスマートフォンでは観づらいし、使いにくい。つまり観なくなる。使わなくなる。それは存在しないと同じになってしまう。だから対策をしよう」

 モバイルファーストに乗り遅れ、失敗の代表格と言われてしまったのは意外にも、モバイルファーストの賛同者であったFacebookです。PC利用者の離脱を恐れ、中途半端な対応をしてしまったためにモバイル利用者をほかのSNSに奪われていきました。

 DeNAやグリーといったプレーヤーの成長を止めたのも、ガンホー・オンライン・エンターテイメントをオンラインゲームのトッププレーヤーにしたのもモバイルファーストへの実践の差です。

 モバイルファーストの実践において、中途半端な対応は必ず失敗します。よくあるのは、モバイル対応がユーザーインタフェイスの改善であるという勘違いです。

 スマートフォンで操作しやすい画面設計をすることは大切です。ただ本当に提供すべきなのは表面上のデザインの工夫ではなく、その情報やサービスに触れた体験を特別なものに感じさせる工夫“ユーザーエクスペリエンス”です。

 生活者がどういった場所で、どんな気持ちでいるのか。モバイルを通して、情報やサービスに触れることで、どのような反応を示すのか。その反応に対して、どう返答すべきか。そのインタラクション体験は、新たな気づきや楽しさ、喜びのあるものなのか――。

 重要なのは、モバイルという機器の中でどのようなインタラクションがあるかではありません。モバイルを持つ生活者の心理や行動、環境を想定した体験イメージを作り手が持っているかどうかです。作り手の都合に合わせて体験イメージを歪曲してしまうと、モバイルファーストの本来の目的であるユーザーエクスペリエンスの提供は不可能なのです(図4)。

図4●ユーザーエクスペリエンスの設計プロセス 従来のモバイルファーストは画面設計だけにフォーカスし、ユーザーの体験イメージについての考慮が足りなかった。モバイルファーストの本質はユーザー・エクスペリエンスの開発である
図4●ユーザーエクスペリエンスの設計プロセス
従来のモバイルファーストは画面設計だけにフォーカスし、ユーザーの体験イメージについての考慮が足りなかった。モバイルファーストの本質はユーザー・エクスペリエンスの開発である
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