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 トップアーキテクトは、広範囲の技術知識のほかにも多彩なスキルを持つ。取材を通じて、彼らに共通する三つの力が浮かんだ。3人のトップアーキテクトの現場エピソードを交えて紹介する。

革新力
常識破りの提案で短納期を実現

 トップアーキテクトが備える力の一つは「革新力」である。常識にとらわれることなく、新しい方法論や技術を組み合わせ、最適な開発プロセスとシステムを提案する。

 ゼンアーキテクツの岡 大勝氏(代表取締役 CEO アーキテクト)も、そうした革新力を持つ一人だ。岡氏らが2013年春に終えた金融機関A社のWebシステム開発プロジェクトを例に説明しよう。

金融機関にパブリッククラウドを提案

岡 大勝 氏
ゼンアーキテクツ 代表取締役CEO アーキテクト。日本DEC(現・日本HP)、日本HP、日本ラショナルソフトウェア(現・日本IBM)などを経て、2003年に独立。業務システムの構築支援に携わる。プロセスエンジニアリングを得意とする

 そのプロジェクトで開発するのは、顧客の個人情報を扱う50画面ほどの業務システムだった。納期は要件定義を含めて6カ月と、スケジュールが極めて厳しかった。

 「普通にシステムを開発していては、納期に到底間に合わない」。こう考えた岡氏は大胆な提案をした。それは、インフラに米Microsoftのパブリッククラウドサービス「Windows Azure」を採用する、というものである。

 クラウドを使う理由は、サーバーやストレージ、ネットワーク機器などハードウエアの調達・設定に要する期間を短縮するためだ。今どきクラウドを使うのは当たり前だと思うかもしれないが、このケースでは常識破りだった。ユーザーA社は金融機関であり、しかも顧客の個人情報を扱うシステムだったからである。

 セキュリティを懸念する声が上がることを想定した岡氏は「アプリケーションレベルで、暗号化したデータを扱う」という仕組みを併せて提案した。アプリケーション内部のみでデータを復号するので、個人情報を蓄積するクラウド上のデータベースが万一ハッキングされても、データは暗号化されている。暗号化の機能を実装する工数、性能劣化などデメリットもあったが、クラウドを使うメリットのほうが圧倒的に大きいと判断した。

要求や課題をRedmineでやり取り

 岡氏の常識破りはそれだけではなかった。アジャイルの開発プロセスを導入し、対面でのミーティングの大半を省略するという提案もした。

 このプロジェクトにおける1回のスプリントは2週間であり、通常はそのたびに対面でのミーティングを開き、その時点までに開発したシステムを基に新たな要求をヒアリングする。

 ミーティングの代わりに岡氏は、プロジェクトマネジメントツールの「Redmine」を使い、開発チームとA社の関係者の間で、要求や課題などの情報を綿密に共有することにした。

 さらに岡氏は、スプリントごとにA社でユーザーテストを実施している間、並行して別の機能の開発を進めるというプロセスと体制を整えた。

 こうした工夫により、開発期間を短縮。無事、納期までにシステムを稼働させることができたという。