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吉田 和正氏

 新しいマイクロアーキテクチャを採用したプロセサ「Woodcrest」の投入,「Viiv」や「vPro」をはじめとしたプラットフォーム・ブランドの発表など,この半年間で新しい施策を矢継ぎ早に打ち出しているインテル。インテルは2006年をどのような年と位置づけているのか。そして今後どのような戦略を打ち出していくのか。吉田和正代表取締役共同社長に意向を聞いた。
(聞き手=ITpro発行人 浅見 直樹,構成=ITpro 高下 義弘)


年初にはコンシューマ向けパソコンのプラットフォーム「Viiv」を,4月には企業向けパソコンのプラットフォーム「vPro」を発表しました。そして6月末には「Coreマイクロアーキテクチャ」を採用したサーバー向けプロセサ「Woodcrest(本誌注:デュアルコア Xeon 5100番台)」を発売しました(関連記事)。

 2006年はまだあと半年も残っていますが,これだけ多くのブランドや製品群を発表した年はインテルの歴史の中で,おそらくない。日本法人のインテルは今年30周年ですが,記念すべき年に数多くの発表をした格好です。ただし,この先3年,5年というスパンで見ると,2006年は一つの通過点でしかありません。


インテル30周年の年に

 インテルは2003年,ノート・パソコン向けのプラットフォーム「Centrino」を発表したのを機に,プロセサ・カンパニーからプラットフォーム・カンパニーへと舵を切り始めました。しかし当然のことですが,いきなりプラットフォーム・カンパニーだと宣言しても,市場に理解してもらうことは難しい。モバイル性能をプラットフォームとして実装したCentrinoの位置づけやメリットを,ユーザーに説明したり実感してもらったりする時間が必要でした。あれから3年経ったいま,多くのノート・パソコンにCentrinoブランドが付いています。Centrinoで無線LANやモバイル・コンピューティングの市場を広げたと自負していますが,その起点は2003年だったわけです。

 ViivとvPro,そしてWoodcrestを発表した2006年は,第二の起点と言えるでしょう。Centrinoの成功体験を,今度はデジタル・ホームやデジタル・オフィス,そしてデジタル・エンタープライズに適用する。そのための布石が2006年です。当社はテクノロジー・カンパニーですから,コンセプトだけで終わってはいけない。製品を投入してから市場に定着するのに3年はかかるとし,今年打ち出した一連のものが実を結ぶのは,2010年頃でしょうね。

 2010年といえば,その次の年である2011年は,竹中(平蔵・総務)大臣が「完全デジタル元年」と命名していますよね。デジタル・ホームを狙っているインテルにとっては,この2011年が大きなターゲットです(りんく関連記事)。大きな存在感を持っているテレビが,アナログからデジタルに完全に移行する年です。また,2010年度をメドに,政府はブロードバンド・ゼロ地域の解消を目指すとしています。ここに向けてITに関わるメーカーやベンダーは大きな動きを見せる。インテルも例外ではありません。

 エンタープライズ分野では,いわゆる日本版SOX法が2009年3月に施行しますよね。vProの管理機能は,内部統制の考え方にぴったりと合う。こうした2010年前後の社会環境を見据えて動いていきます。


エンタープライズは10年かかる

 Centrinoで3年もかかったのですから,エンタープライズ分野はもっと時間がかかります。実際,Itaniumも発売から5年,開発着手からは10年以上という長い取り組みでようやくここまで来ました。近いうちに,Itaniumの次期版「Montecito(開発コード名)」を発表します。

 2007年以降はこうしたプロダクトをしっかり広めていく必要があるわけですが,テクノロジ面で何もしないわけではありません。仮想化やディザスタ・リカバリー(災害などによる障害からの復旧)など,プロセサをベースに付加価値をどんどん積み上げていきます。

 プロダクトを手がける企業は,先を見越したグランド・デザインを描く必要があります。将来を見通して,きちんとしたプロダクトで手を打つ。これがプラットフォーム・カンパニーとして大事なことだと思っています。

米マイクロソフトは「Windows Vista」を2006年中にリリースする予定でしたが,2007年に延期しました。パソコンのプロセサ・メーカーとしては大きな影響があるのでは。

 もちろん影響がないわけではないですが,インテルのミッションとしてはOSがどうあれ,プロセサという側面からパソコン業界をけん引するしかないわけです。

 ただ,どちらにせよ1月から3月はパソコンが一番売れる時期ですから,そのときに新しいOSであるVistaが登場すれば,よいタイミングと言えるのではないでしょうか。その時期であれば,「Conroe」などインテルの新しいパソコン向けプロセサが価格的にもこなれてくるでしょうし。どっちに転んでも,ポーンと行くでしょうね。ですから,(Vistaのリリース時期が変わっても)当社としては戦略を立ててきちんと物事を進めていきます。


プロセサは社会の動きとつながっている

プロセサの事業展開は,通信インフラや放送など,社会の動きとずいぶん連動しているようですね。

 そうですね。もはやパソコンやサーバーは社会に完全に組み込まれていますから。各種の市場調査を見ると,サーバーの出荷台数は2ケタ成長です。この伸びは,社会のニーズをよく示していると思います。

 社会のニーズという点で言えば,サーバーの消費電力の問題が今後フォーカスされるはずです。米ガートナーの調査によると,年間のITコストで2番目に挙がるのが電力代。それほどに大きな問題として表面化してきています。Woodcrestで採用したCoreマイクロアーキテクチャは,そうした社会のニーズにも対応するものです。

ただ,消費電力という問題は一見ユーザーにはなかなか意識されにくく,エコ・システムに優しい技術の重要性を訴えるのにやや難儀しています。自動車業界は,社会に対して「(内燃機関とモーターを組み合わせたエンジンである)ハイブリッド技術」を提示し,かなり浸透していますよね。同じように,IT業界全体でもっとメッセージを出していく必要があると思っています。

吉田和正氏


そうした技術のメッセージをわかりやすく訴えるうえで,ブランドは大事ではないかと思います。パソコン技術のブランドについてはViivやvProを提示していますが,サーバーについてはどうお考えですか。

 (サーバーにもブランドは)必要だと思います。ただし,ブランドを設ければいい,という単純なものではありません。ブランドの意味,ブランドがユーザーに対して約束するもの,そういったブランド・プロミスを確立できる技術が裏にしっかりなければ,ブランドを設ける意味はありません。

 サーバーは一般のユーザーから隠ぺいされている面もありますから,なおさら(ブランド作りを通して)サーバーの性能や信頼性,エコ・システムへの貢献度という価値を社会に訴えていく必要があるのかもしれません。いずれにせよ,今後の重要なテーマとして取り組んでいくつもりです。