アプリケーションのサービス化を考えるときに、SOA(サービス指向アーキテクチャ)は欠かすことのできないキーワードだ。世界最大の業務アプリケーション・ソフト会社であるSAPはSOAをどうとらえているのか。国内での状況を含め、SAPジャパンの安田誠パートナー&マーケティング統括本部シニア・バイスプレジデントに聞いた。(聞き手は中村 建助)

写真●SAPジャパンの安田誠 パートナー&マーケティング統括本部シニア・バイスプレジデント
SAPジャパンの安田誠 パートナー&マーケティング統括本部シニア・バイスプレジデント

SOAについてどういったものだと考えているのか。

 さまざまなサービスを組み合わせて、企業のビジネスを支援するシステムを作っていくことだろう。技術的にさまざまな議論があるのは理解している。

 個人的には、バッチ処理からオンライン処理へ、そして階層型だったデータベースがリレーショナル型に変わって、その後クライアント/サーバー・システムが現れたことに続く、企業の基幹系システムの開発におけるあるべき一つの進化の形だと考えている。C/Sにもいろいろな処理の方法があって、クライアント側では画面の処理だけを担うようなものもあった。これまでのWebシステムは、開発の考え方から言えばC/Sから大きく変わったものではなかった。

サービス化が進むのは間違いない

 企業のシステム開発がSOAの方向に進むことは間違いない。重要なのは、サービスを企業がどう使うべきなのか、企業のためにサービスはどうあるべきかを考えることだ。

 これからのシステムはすべてを一から開発することは減ってくる。可能な部分については再利用できるサービスを使うようになっていく。外部の企業が開発した有償のものであることもあれば、自社で以前に開発したサービスだということもある。

 SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)で業務アプリケーションそのものから、再利用可能な部品をサービスとして利用する場合まで、様々な方法が考えられる。今、Webの世界では、「マッシュアップ」という単語が定着しているが、企業でもこれに似たやり方が可能になると考える。

 単なるポータルではなく、一つの画面上に複数の操作画面が表示されており、背後ではそれぞれのシステムのデータベースとも接続している、といったものだ。SAPではこういったシステムのあり方について、以前から「コンポジット・アプリケーション」と呼んできた。

SOAによるシステム開発は現実的なものになっているのか。

 少なくとも現時点で、企業のすべてのシステムをSOAで連携させるのは簡単ではない。不可能かもしれない。ただいくつかのシステムを連携させることはできる。他社製品を含めて、SOAを実現させるツールがそろってきたのも事実である。

 SOAによるシステムを考える場合に重要になってくるのは、実際にどんなサービスを使って、それをどう連携させるかだ。受注入力というプロセスを考えて欲しい。単純には受注データベースに受注案件を入力すると考えがちだが、実際は製造や在庫のデータベースを更新したり、部品を発注したりする処理が並行して進んでいる。多くの企業がSOAで悩んでいるのは、受注全体を一つのサービスとして扱うのか、それとも在庫や生産のデータベースの更新を一つとして扱うべきなのか、ということだ。

 昔のシステムを簡単に捨てることはできない。SOAについても、今回はここまでつなぐことができた、これだけサービスを再利用した、といった形で徐々に適用範囲を広げていくのが現実的だろう。一つひとつのサービスをきちんと作るのは当然のこと、これからは企業の業績とビジネス・プロセス、そして利用するサービスをうまく組み立てる能力を持つ人間がシステム開発に不可欠になってくる。

日本企業はERPの導入が“いびつ”

海外に比べて日本企業はSOAの導入に慎重に見える。

 今後、日本企業がグローバルで生き残ることを考えると、積極的にならざるを得ないのではないか。日本が世界で戦う米国や中国の企業は、ERPパッケージ(統合業務パッケージ)を導入して、KPI(重要業績指標)をリアルタイムに近い形で把握できるようになっている。

 これに対して日本企業は、ERPの導入がいびつなことが多く、本来なら分かるはずのKPIが見えなくなっていることが少なくない。本来ならオンラインで入力すべきデータをバッチにしていたり、連携していない別のシステムで必要な処理を実行したりしているからだ。

 企業の迅速で正確な行動のためには、KPIなどによる見える化は不可欠。だが、今の日本企業のシステムを一から作り直すのは簡単ではない。そこで浮上してくるのが、SOAでシステムを再利用可能な形でつなぐという選択肢になる。

なぜ今、SOAがこういった問題の解答になったのか。

 一つ忘れてはならないのは、ハードやネットワークの処理能力が以前とは比べものにならないくらい高くなっていることだ。SOAを実現するプロトコルは冗長度の高いもので、以前のネットワークでは帯域が十分ではなかった。だがこの問題は解決した。それからSOAではメモリー上にデータをマッピングしてこれを高速にやり取りする必要があるが、一般的なサーバーである程度の処理が可能になった。

SOAの分野におけるSAPの強みはどこにあるのか。

 当社が長年、ERPパッケージとして提供してきた、実績のあるサービスを持っていることだ。現時点で、大きなくくりのサービスで500、もう少し細かなサービスのレベルで1000種類を提供できる。

 2010年までには、当社の製品に関しては完全にSOAに対応したものにすると宣言している。現在、00年ころまでに導入されたR/3 4.6cのバージョンアップをお願いしているが、これはSOAでシステムを開発できる企業に変わってもらいたいからだ。

 もちろんすべてをSAPにすればよいと考えているわけではない。実際に当社のNetWeaverや、IBMのWebSphere、富士通のインターステージといったミドルウエアは、相互にサービスを呼び出すことが可能だ。しばらくは複数のミドルウエアが存在し、それ同士がデータをやり取りする方でSOA的な開発が進むのではないか。