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SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)が、来るべきネットワーク社会の大きな流れになる。サン・マイクロシステムズ日本法人の社長である末次朝彦氏はこう予想する。同社はすでにこういった世界に向けて舵を切った。(聞き手は中村 建助)

写真●サン・マイクロシステムズ 代表取締役社長 末次 朝彦氏
写真●サン・マイクロシステムズ 代表取締役社長 末次 朝彦氏

来るべきネットワーク社会について、具体的なイメージがありますか。

 二つあります。一つはネットワークの活用を加速する領域です。分かりやすい分野を挙げるなら、RFID(ICタグ)を管理するシステムや「Web2.0」の世界にかかわるものです。

 もう一つ、大きな流れになるだろうと考えているのが、SaaSの世界です。SaaSのモデルで、アプリケーションをサービスとして利用し、データセンターにデータを預ける世の中になるとと思うんですよ。

 大企業が社内でシステムを持つとことには、それなりに意味があるのでしょうが、果たしてすべての企業が自社でシステムを持たなければいけないのか。今現在、情報漏洩対策や個人情報保護法の順守を徹底しようとすれば、システム部門への負担が重過ぎて、現場では対応しきれないのではないでしょうか。

 SaaSの世界では、システムの運用をプロに任せることができます。安心感が持てるだろうし、セキュリティも改善するはずです。

 自社開発からSaaSに切り替えれば、サービスの乗り換えも容易になりますよ。ある会社のサービスが気に入らなかったら、別の会社のサービスに移行すればいいんです。これが、今後の企業ユーザーのあるべき姿ではないですか。

ベンダーにとって、SaaSは魅力的ですか。

 我々のパートナー企業は、いつまでも手作りのシステム開発に依存していくわけではないと思っています。一度作った良いシステムを横展開したいと考えるところもあるでしょうし、データセンターに付加価値を持たせようという発想も出てくるはずです。

迅速で柔軟なビジネスを可能にする

サンはずっと「ネットワークこそコンピュータだ」というメッセージを発信してきましたが、インターネットの普及した今では、他社との違いが分かりにくくなっています。今後、ユーザー企業にどういったことを訴えていくつもりですか。

 今現在、我々がお客様に提供していこうというものについては、二つの視点で語ることができます。

 一つは「Business Efficiency」です。日本語にすると事業の合理化・効率化のことだと受け取られがちなんですが、そう単純な話ではありません。

 より迅速で柔軟なビジネスを可能にしようというもので、これを実現する要素としては、2005年8月に米本社が買収したEAIツール・ベンダーの旧シービヨンド・テクノロジーの製品などがあります。

 当社の従来製品でいえば、サーバーの消費電力を低減するT1プロセサや、事業の合理化を支援するアイデンティティ管理のためのミドルウエア「Sun Java System Identity Manager」などが、その実現に有効です。

 もう一つは「Business Governance」です。日本版SOX法をはじめ、企業統治やコンプライアンスにかかわるものです。当社製品でいえば、シンクライアントのSun Rayを使ったセキュリティの強化などが挙げられますね。

 実は05年7月から06年6月まで、戦略は製品ベースで立てていて、その数も七つと多かった。ユーザーに分かりやすいメッセージを提供するという、当たり前のことができていなかったのかなと反省しています。そこで、Business EfficiencyとBusiness Governanceを打ち出すことにしました。

当社はオープンを貫く

SolarisやSPARCといった、御社を支えてきた中核製品はどうですか。LinuxやOpteronサーバーもある中でサンが何に力を入れるのかを、気にするユーザー企業の声も聞きます。

 SolarisとSPARCへのこだわりは当然捨てません。とても良い製品だと思ってますし自信もあります。

 ですが、SolarisとSPARCの世界にユーザーを囲い込みたいのかといえば、それは違います。米AMDのプロセサであるOpteron搭載サーバーでは Windowsも動作します。ハードとプロセサ、OSとさまざまな組み合わせを提供したうえで、それでもSolarisとSPARCを選んでいただければよいわけです。

自社製品の競争力に自信がなくなったのですか。

 この発想の原点は、Javaにあります。Javaの上でアプリケーションを開発すればプラットフォームは選ばないですよね。囲い込みたいんなら、Javaを選んだらサンのハードでしか動かないという路線が正しいことになる。

 だけどそうじゃなくて、Javaで書いたアプリケーションはどんな製品でも動きますよと。特定のOSに囲い込まむのではなくて、Solarisでも動きますという方法を採ったのです。確かにどんなOSでもJavaは動くわけですから、サンのハードから出て行く敷居は低くなりましたが、入ってくるための敷居も低くなっているわけです。

 当社は、Javaによるアプリケーションが増えていけば、処理性能の高さや信頼性が基準になって、当社の製品が選ばれる機会が結局は増えると考えています。そしてこのやり方は奏功しつつあります。だから当社は、今後もオープンな姿勢を貫くつもりです。

ユーザーにこうした考えは受け入れられていると?

 認めていただけていると思います。今後は、8コアで1個のプロセサを構成する完全な新設計の「UltraSPARC T1」が成長を牽引してくれるでしょう。これから到来するであろうユビキタス・ネットワーク社会を考えると、これまでになかったさまざまなアプリケーションが利用され、大量のデータがやり取りされることになる。サーバーの処理能力への要求はどんどん高まり、台数もどんどん増えていくでしょう。

 既存のプロセサでは、データセンターの物理的スペースや冷却装置への供給電力の両面でキャパシティを超えてしまいます。今後は、サーバーの消費電力量を抑えて発熱量を減らし、設置面積も少なくしながら、より大きな処理性能を提供できるサーバーが必要になるわけです。

 私たちが「クール・スレッド・サーバー」と呼ぶ、T1プロセサ搭載サーバーならこういったニーズに応えられる。今は来るべきネットワーク社会に準備をしているつもりですので、実際のビジネスにつながるのはこれからでしょうね。

全社の10%以上を売り上げたい

サン日本法人にとって久々の日本人社長です。新社長として、どんなことを期待されているとお考えですか。

 ずっと一緒にやってきた前社長のダン・ミラーが会長として残っているので、日本法人の体制や業務については、これまでと比べてそれほど大きな変化があるわけではないです。

 ただ、ダンでなく私だから果たせる役割があることは認識しています。それは、素肌やハートで感じた日本企業や市場の声を、日本人としての気持ちで米国本社に主張することと、本社のメッセージを日本語で通訳を介さずにユーザーやパートナーにきちんとお伝えするということです。

 05年の9月ぐらいから、UltraSPARC IV+やUltraSPARC T1を搭載したサーバーを出荷してきたなかで、社内はずいぶん元気になってきました。Opteronを搭載したサーバーも売れています。

 皮膚感覚的なものになってしまうのですが、06年の1月ぐらいからは実際の売り上げにも結びついているように感じます。苦しかった時期にも、R&D(研究開発)への投資を削らなかったことが実を結んだと思っています。

社長としての目標は何ですか。

 売上高については、サン全体の10%以上までは回復させたいですね。それから、サン内部における日本の発言力・重要度も今の2倍にしたい。

変革の時代に期待

日本のサンはこれまで、間接販売を貫いてきました。パートナーありきの姿勢を変えるつもりはないのですか。

 当社はパートナー企業を主体としたビジネス・モデルを自らの強みだと考えています。これを変える気はない。米国本社のような直販モデルに移行することはありません。

 コンピュータ・メーカーがシステム・インテグレーションも担当することに、ある種の安心感を持たれるお客様がいらっしゃるのは確かでしょう。日本のように有力なシステム・インテグレータが多数存在するところでは、競い合うよりもパートナーシップを結ぶほうがメリットが大きいと判断しています。

06年4月24日には米国法人のCEO(最高経営責任者)が、スコット・マクニーリ氏からジョナサン・シュワルツ氏に代わりました。この交代は日本法人にどんな影響をもたらすのでしょうか。

 ジョナサンは長い間、ソフトウエア関連の事業にかかわってきた人間です。そのうえ趣味もブログや電子メールなどとWeb2.0的です。こういった素養のあるCEOですから、いわゆるサーバー・メーカーを超えた変革をもたらすには最適の人間だと思います。変化の激しい時期に、日本法人の社長として働けることにわくわくしています。

*日経コンピュータ2006年6月26日号でインタビューとして掲載した記事を加工して掲載した