PR

写真1●富士通 ネットワークサービス事業本部の河嶋氏
写真1●富士通 ネットワークサービス事業本部の河嶋氏
 ワンセグチューナーを搭載した携帯電話はラインアップが充実し,着実にユーザーが増加している。携帯電話以外のワンセグ専用機も複数登場し,またUSBタイプのパソコン用ワンセグチューナーも人気だ。

 そうした中で富士通は,放送免許を取得することなく店舗内などの限定したエリアに対してワンセグで情報を配信できるシステム「スポットキャスト」を3月5日に発表した。スポットキャスト開発の経緯と,今後の展開予定について,ネットワークサービス事業本部 事業企画部プロジェクト部長の河嶋 英治氏(写真1)に聞いた。






スポットキャスト開発に至った経緯を教えてください。

 富士通は,携帯端末に実装するワンセグ受信用チューナーLSIで,国内トップのシェアを持っています。ワンセグの本放送が始まる前から受信チップの規格作成や開発を手がけてきた成果です。LSI製品を開発していく中で,ワンセグが大きなムーブメントになりそうだという感触がありました。広く誰にでもきちんと情報を届けるのがブロードキャストの本来の形です。しかし,「限られた場所で限られた人,限られた瞬間に,そこだけでしか手に入らないような放送」ができたらどんなニーズが生まれるだろうかというのが,発想の始まりです。

 もともと特定のユーザーニーズを意識して作り始めたわけではありません。電波法の規定の中で,免許がいらない微弱電波でワンセグ送信機を作ったらどうなるか。誰でも自分たちのアイデアで新しい放送ができるかもしれない。こういうものを作ったら面白いのではないかという「シーズ」ありきで作り始めました。

 地上デジタル放送はUHF帯の電波を使います。この帯域では,送信機から3メートルの距離で35μV/m以下の電界強度なら,微弱電波として免許なしに使うことができます。もともとテレビ放送で使っている帯域であるため,微弱電波として認められる電界強度が他の周波数帯より低く抑えられているのですが,この領域でなんとか放送できないかと技術研究を行ってきました。

写真2●「スポットキャスト」送信機の試作機
写真2●「スポットキャスト」送信機の試作機
[画像のクリックで拡大表示]
 3月5日に発表した機器は試作機で,あくまで技術としての発表です(写真2)。商品として仕立てるのはこれからになります。まず技術を発表して,顧客と一緒に使い道を模索していこうということで,製品化前ですが予定より前倒しして説明会を開催しました。フタを開けてみると,予想に反して非常に顧客の反応が良かったので,こちらとしてもびっくりしてるところです。

 JEITA(電子情報技術産業協会)の調べでは,2006年末の時点でワンセグケータイの累計出荷台数は341万台に達しています。2006年12月だけを見ると,出荷の5台に1台はワンセグ対応という状況です。各事業者とも今年はワンセグ端末が主力となってきており,今年後半には携帯電話を買うとワンセグという時代になるとも考えられます。そういったワンセグの勢いに,うまくはまったのかなと思います。

 ケータイ向けのWebサイトを使った情報配信はすでに広く行われていますが,パケット代がかかったり有料サイトだと,どうしても顧客の指がそこで止まってしまう傾向があります。これが大きな壁になってる。ワンセグなら情報を得るためのコストはタダであり,この壁を突破できるのがマーケティング面からみると大きな魅力となっているのだと思います。

開発を始めたのはいつごろですか?

 富士通が携帯端末向けのワンセグ受信チューナーLSIを作り始めたのが2年ほど前です。スポットキャストの発想が出てきたのもそのころで,技術開発を先行して,ようやく送信機の試作機ができたのが発表のタイミングだったわけです。

 スポットキャストも,原理的には放送局が使っているワンセグ放送機と同じです。出力を小さくした送信機ですが,誰もやったことがない領域であり,実際に作って試してみないとわからないことも多いのです。開発を始めるまでは,ちゃんとデータが飛ぶのか,どう映るのかも分からなかったほどです。今回やっと試作機ができたので,興味をもってくれた顧客とこれからいろいろな実験を行い,面白い使い方を試していきます。その結果を取り込みながら,2007年夏には第一弾の送信機を商品化したいと考えています。発表から1カ月間の反応は非常に良く,顧客からは早く商品化して欲しいというリクエストが強いので,急ピッチで開発を進めています。