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 NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は,ロシアの通信事業者トランステレコムと共同で,石狩とサハリンを接続する海底ケーブル「HSCS」(Hokkaido-Sakhalin Cable System)の敷設に乗り出した。HSCSが完成するとNTTコムは,トランステレコムがシベリア鉄道沿いに敷設している約5万kmの光バックボーンとの接続が可能になる。同社のグローバル事業部 プロダクトマネジメント部の竹中正明部長にその狙いや経緯を聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コミュニケーション



ロシアまで海底ケーブルを敷設する狙いは何か。

 
  NTTコミュニケーションズ グローバル事業部 プロダクトマネジメント部 竹中正明部長
 欧州と日本を接続する需要が増えているため,最短の通信ルートの確保が必要だったからだ。海底ケーブルにより,トランステレコムの光バックボーンと接続すれば,日本から欧州までの通信ルートをこれまでよりも短くできる。

 現在の日本と欧州の通信ルートは,インド洋回りと米国回りの二つがある。海底ケーブルが完成してトランステレコムの光バックボーンと接続すると,第3のルートができる。このルートは,欧州と日本を接続する最短のルート。実際に,通信トラフィックの遅延は他の2ルートに比べて短くできる(関連記事1関連記事2)。

 しかも,このルートはシベリアから欧州までが陸上のケーブルで,海底ケーブルの部分は少ない。陸上のケーブルであれば海底ケーブルの故障に比べると,故障時の対応を格段に早くできるメリットがある。

海底ケーブルの敷設でトランステレコムと合意するまでの経緯を教えてほしい。

 ロシア大使館からの紹介などがきっかけで,2005年春くらいから話はしていた。2005年秋には弊社の役員がモスクワを訪問し,今回の海底ケーブルの話だけでなく,2006年10月に合意しているIP-VPN(仮想閉域網)の相互接続などの話を具体的にし始めた。

 ただ,その前にトランステレコムの設備状況を確認する必要があった。当時のトランステレコムの光バックボーンは,「品質があまり良くない」という評判だったからだ。

 そのため,NTTコムのエンジニアが香港からロンドンまでのトランステレコムの光ファイバの品質を改善する手助けをした。それにより,NTTコムが定める標準品質を達成できるレベルに改善できた。そこで,サハリンまで延びていたトランステレコムの光ファイバと,NTTコムのネットワークを接続するために,新たに海底ケーブルを敷設することになった。

海底ケーブルが実際に開通するまでに,まだ課題はあるか。

 5月にも海洋調査を始めるが,実際にケーブルを敷設するには,ロシアの複数の省庁からの免許が必要になる。それらの免許をきちんともらえるかどうかが最も気になる。

 2007年末を完成のメドとしているが,このスケジュールで開通させるには10月までに免許をすべて取得できないと間に合わない。ロシア政府との交渉は,トランステレコムが担当している。

石油・天然ガスの開発プロジェクト「サハリン2」では,途中でロシア政府が中止命令を出すなどの混乱があった。そうしたリスクがあるのではないか。

 懸念が全くないわけではない。ただ,覚書(MoU)を締結した際にはNTTコムとトランステレコムだけでなく,ロシアの情報技術・通信省の大臣など,政府高官が立ち会っている。このようにロシア政府のバックアップがあるので,今回のプロジェクトの信頼性は高いと判断している。

海底ケーブル開通後,ロシアや欧州におけるサービス展開の計画は。

 今回は石狩-サハリン間の1ルートだけだが,いずれ,う回経路としてもう1ルートを石狩以外から敷設することになると考えている。ただしこれは,今後の交渉次第だ。

 また2008年には,モスクワにNTTコムの通信設備を設置したいと思っている。NTTコム仕様の通信設備を置くことで,モスクワ近郊でも当社の仕様や品質の通信サービスを提供できるようになる。故障対応も早められる。ロシアに進出している日本企業が増えているので,こうしたユーザーには大きなメリットとなるだろう。