先月,RAIDコントローラの新製品「Unified Serial RAID」を発表した。この製品の特徴は,「SAS」「SATA」という2種類のディスク・ドライブをサポートすることだという。それにはどのような意味があるのか,ITエンジニアの視点で聞いた。(聞き手は松山 貴之=日経SYSTEMS)
まずは御社のことを教えてください
サーバーとストレージ間ではディスクI/Oが発生します。そのディスクI/Oの要素技術を提供する会社です。サーバーやストレージの部品とも言えるので,一般のITエンジニアの方は当社を意識することは少ないかもしれません。ですがIBM,EMC,日立製作所,デルなどはすべて当社のカスタマーであり,間接的に多くのITエンジニアの方とかかわっていると言えるでしょう。
主力製品は,ディスクを安全に高速に利用するための「RAIDコントローラ」です。かつては「FC(Fibre Channel)」や「SCSI」などのディスク・ドライブ向けが主流でしたが,最近は「SAS(Serial Attached SCSI)」や「SATA(Serial ATA)」といった新しい規格のドライブ向けがほとんどを占めています。
新製品もSAS,SATA向けです。
新製品の「Unified Serial RAID」(関連記事)について教えてください。SASとSATAの両方に対応するということですが,それにはどのような意味があるのでしょうか
通常は,ディスク・ドライブの種類ごとにRAIDコントローラは違います。SASとSATAの両方のディスクを使おうとすると,少なくとも2枚のRAIDコントローラが必要になります。それが1枚でよくなります。
SASとSATAの両方を使うことは,特別なことではありません。一般にSASは性能重視で,SATAは容量単価の低さを重視しています。ですので基幹システムのデータはSASに,バックアップ用途にはSATAに,という使い分けは多くの企業で行われています。
2枚が1枚になるだけなら,大したメリットではないようにも思えますが
一つの例でお話しましょう。例えばある企業が10Tバイトのストレージを,FCとSCSIのディスクで構築していたとします。1枚のSCSI向けRAIDコントローラでは16個のディスク・ドライブが管理対象の限界なので,こうした環境では5枚のRAIDコントローラが必要になるでしょう。
同様の環境をSASとSATAで組むと,もっと多くの容量,例えば60Tバイトでも1枚のUnified Serial RAIDコントローラで十分です。仕様上は,SASであれば1枚のRAIDコントローラで,1024デバイス(ディスク・ドライブ)まで管理対象にできます。ただ現実的にはパフォーマンスなどを考慮すると120デバイスが有効値です。それでも,FCやSCSIに比べれば圧倒的に多い数です。
RAIDコントローラの出荷ベースで見ると,SAS,SATA向けはどのくらいの割合を占めるのでしょうか
すでに,ほぼすべてがSAS,SATA向けです。SCSI向けが完全になくなったわけではありません。“ロングテール”の様に一部の用途ではこれからも使われるでしょう。
RAIDコントローラの需要は大きいのでしょうか
今,企業にとって最大の問題の一つは,大量データの保管管理です。SOX法などを背景に,膨大なデータを長期に保管しなければならず,しかも必要があれば30分といった短い時間で取り出せなければなりません。そうしたことから,SAS/SATAのディスクは多くの企業で使われています。当然,それらのディスク向けのRAIDコントローラの需要も大きいものがあります。
ストレージに目を向けると,その需要は企業から家庭に向かいます。携帯電話やデジカメ,PDAなどにも多くのストレージが使われています。「ストレージあるところにRAIDあり」だと考えています。RAIDという名前は使われないかもしれませんが,ストレージの信頼性や性能を高める技術として,RAIDのニーズは大きいものがあります。