Windows Vistaの発売以降、周辺機器やアプリケーションソフトのメーカーは同製品への対応を進めている。この動きは、サービス面でも見られる。Vistaの家庭向けエディションが搭載する「Media Center」から利用可能なコンテンツが、いくつか登場しているのだ。例えば2007年3月末には、朝日新聞社、ピクセラ、ロイター・ジャパンなどがコンテンツを発表した。
Media Centerは、テレビ番組や音楽、画像などをパソコンで一元的に管理、視聴可能にする機能。特徴の1つが、リモコンでスムーズに操作できることだ。リビングの大画面テレビに映し出し、パソコンに蓄積された映像や音楽を家族で楽しむ――マイクロソフトはそんなシナリオを描いている。
リビングにパソコンを進出させる試みは過去にもあったが、大きな成功を収めることのないまま現在に至る。今度こそ、広く普及するのだろうか。マイクロソフトのデジタルエンターテイメントパートナー統括本部担当、堺 和夫執行役常務に話を聞いた。
■これまでリビングでパソコンを使うというシナリオが普及してこなかった原因はどこにあるか。
大きく2つの要素が不足していたと考えている。まず、使いやすさ。どんなユーザーでも、簡単に利用できるものにするという意味では十分ではなかった。さらに、利用可能なコンテンツも不足していた。
Vistaでは、使い勝手は大幅に改善した。それがテレビなのか、インターネットなのかを意識せずにコンテンツを視聴可能だ。例えば天気予報を見ながら、そのとき空から見た雲の様子を確認する、といったことも簡単にできる。ユーザーインタフェースも改良し、2フィート(パソコンが目の前にあり、マウスやキーボードで操作できる場合)、10フィート(パソコンとの距離が遠く、リモコンで操作する場合)のいずれでも、両方楽しく使ってもらえるようになった。改良に当たってはハードウエアのトレンドを研究した。例えば横長のディスプレイが主流になっていることから、メニューの選択時に横方向へのスクロールを可能にした。
魅力的なコンテンツも多数揃った。例えば「第2日本テレビ」では、日本テレビが放映した番組をパソコンで見られる。たとえ録画し忘れても、好きな時間に視聴できるのは便利だ。オーディオブック(本を音声化したもの)を購入できるピクセラの「ListenBook」も面白い。華やかな動画ももちろんすばらしいが、こうしたコンテンツにも音声ならではの魅力がある。朝日新聞の「アサヒ・コム」は、ブラウザーとは異なる新たなユーザーインタフェースを採用し、リモコンを使ってスムーズにニュースを閲覧できる。
さらに、大画面テレビが低価格化していることが追い風となっている。これにさまざまなコンテンツを表示させ、家族で楽しみたいというニーズが高まるはずだ。
■家電のパソコン化も進んでいるし、強力なゲーム機も登場している。そうした新しい競争相手に、いかに対抗するか。
確かに今は、インターネットに接続可能なテレビもある。携帯電話も高機能化する一方だ。こうした中で、パソコンのように難しいものはいらないのではないか、という問いを投げかけられることもある。
だが私は、これらは互いにぶつかり合うものではないと考えている。それぞれが良い影響を及ぼし合って、新しい分野を生み出していくのではないか。「パソコンか、それとも携帯電話か」といった二者択一ではないのだ。共存共栄で、各々が伸びていけると考えていると考えている。
例えば、携帯電話でテレビ番組を見たり、音楽を聴いたりしているユーザーがいたとする。使い込むにつれ、動画や音楽を大量に保存したい、管理したい、などもっと進んだ使い方をしたくなるはずだ。そうすれば、パソコンがあった方がいい、という話になるはずだ。
パソコンも、デバイスと連携することでより楽しく使えるようになる。パソコンにダウンロードした音楽は、「gigabeat」のなどの携帯音楽プレーヤーに入れて持ち運べる。これ以外にもさまざまなデバイスと連携可能で、ゆくゆくは自動車などとの連携も実現するのではないか。このとき気になるのは著作権保護だが、その点我々はしっかりとしたDRMを保持している。だから、著作権保持者にも安心してコンテンツを提供してもらえる。
もちろん、難しいと思われがちなパソコンも、使いやすさを追求していかなければならない。重要なのは、「易しくて、楽しい」こと。技術のための技術ではダメだ。