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【後編】ネットありきの時代は終わった,身近な総合ICT企業を目指す

網の質に関しては,これまでユーザーにあまり宣伝せずに向上に努めてきた。ところがNGNでは,網の高機能化を大々的に宣言している。

 確かに従来は我々の中で粛々と高機能化を進め,それがユーザーにどのようなインパクトがあるかについてはほとんど説明してこなかった。網のスペックも我々が決めてメーカーに作ってもらっていた。

 今回のNGNは,オープンの概念で進める。我々だけでスペックを決めてすべて調達するのではなく,方向性を早めに宣言した上で,メーカーやベンダー,他の事業者と様々な分野で協業していく。アプリケーションも我々だけでなく,自由に作って下さいというスタンスになる。

 ネットワークだけを提供する世界は終わる。今後はどのようなアプリケーションを提供してユーザーに便利と感じてもらえるかが勝負になる。IP化で大きく変わったのはこの部分だろう。

NGNに期待する企業は多い。企業向けにはどのような展開を考えているのか。

 具体的な展開まではまだ見えていない。フィールド・トライアルの状況を見ながら決めていくことになる。企業が利用する上で一番問題となるのは提供エリア。商用サービスはユーザーの多い地域から徐々に展開していくので,カバーできない拠点がどうしても出てくる。

 当面は既存ネットワークと併用してもらうことになるが,それがうまくいくかどうかは今後見極めていく。提供アプリケーションは,4月から開始するモニター実験の状況を見ながら考えていく予定だ。

現状のサービスはNTT東日本とNTT西日本で分断されており,使いにくいという声がユーザー企業から出ている。NGNではどうなるのか。

写真●高部  豊彦氏
撮影:新関 雅士

 確かに現在は東西でサービスのスペックが異なるため,ユーザー企業だけでなく,ISPや工事会社にも大変な不便を強いている。NGNでは,こうした問題が生じないようにしようと考えている。セキュリティやQoSの機能を東西で異なったものにすると,また迷惑をかけてしまうことになるので,スペックは基本的に合わせる方向で構築を進めている。

 もっとも,地域性の違いがあるので,料金や販売体制などは東西で異なったものになる。ただ,オプション料金などが違う程度で,根幹の部分が同じであれば全国で東西の網を利用しても不便はないと考えている。

フィールド・トライアルでは地上デジタル放送のIP同時再送信も検証しているが,具体的なサービス像が見えない。

 当社でもまだ見えていない。著作権や再送信の許可などの問題が徐々に解決されたとしても,ネットワークの設備投資をどうするかという課題が残る。設備投資に見合った料金をユーザーに請求すれば,今まで広告付きで無料で見ていたものが見られなくなる。

 現状の地上アナログ放送における難視聴対策のように,特定のエリアだけをカバーするようなモデルでは,おそらくビジネスとして成り立たないだろう。技術的にできるという話と,実際のビジネスがどうなるかは全く別だ。そもそも,従来の鉄塔方式と光インフラの方式を比べると,一体どちらの方がトータル・コストが少なくて済むのかという議論もある。ビジネス面はこれから詰めていくことになる。

2,3年後のNTT東日本はどのような企業になっているのか。

 社員には常々,身近な総合ICT企業を目指したいと言っている。身近なというのは,何かあったときにまず相談される企業であること。これまではネットワークを利用してもらうというコンセプトでサービスを開発してきたが,そのような時代は終わった。ユーザーが買うのはアプリケーションであり,ネットワークを売りますといってもピンと来ない。

 NGNでは,この点をきちんと考えていく必要がある。ユーザーにネットワークのスペックを説明しても「じゃあ何ができるの」となる。我々から「これができる」「ここをサポートできる」と提案できなければならない。特にサポートは,ネットワークにあらゆる情報端末が接続されるようになると,ますます重要になる。うまく使いこなせない人が増えてくるので,きちんとサポートしていかなければならない。

 我々は基本的にサービス業。結局,ユーザーがいなくなってしまったら何の意味もない。ユーザーにとって何が一番嬉しいのかを考えながら常に仕事を見直していくことが重要だ。あとは,いかにして内部のコストを削減していくか。今後はこの二つをきちんと両立させていくことが不可欠になる。

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NTT東日本代表取締役社長
高部 豊彦(たかべ・とよひこ)氏
1947年1月9日生まれ。静岡県出身。69年に東京大学法学部を卒業し,日本電信電話公社(現NTT)に入社。94年2月にマルチメディア推進室担当部長に就任し,OCN事業の立ち上げに携わった。96年12月からはNTT再編成を担当する再編成対策室担当部長に就任。99年1月にNTT持ち株会社移行本部第五部門長,同年7月に取締役第五部門長。2002年6月にNTT持ち株会社代表取締役副社長。2005年6月に現職のNTT東日本代表取締役社長に就任した。趣味は読書。

(聞き手は,林 哲史=日経コミュニケーション編集長,取材日:2007年3月8日)