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「ウェブサービス」に力を入れるGMOインターネット証券の高島秀行社長
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 ネット専業証券のGMOインターネット証券(東京・渋谷区)が、自社の証券取引システムをウェブサービス(ウェブAPI)として公開する取り組みを加速している。

 ウェブサービスとは、ウェブサイトの受発注・情報データベースなどの機能を公開して自由に利用できるようにする仕組みのこと。利用者は特定の機能だけを引き出し、様々な機能を組み合わせて利用できる。米Amazon.comや米Googleなどが積極的にウェブサービスを公開しており、「ウェブ2.0」の典型的な現象だといわれる。

 プログラミングの知識がある利用者は、GMOインターネット証券が公開したサービスを組み合わせて自動発注システムなどを簡単に自作し、ウェブブラウザー画面を経由せずにサービスを利用できる。例えば、「円安が一定以上進んだら、自動的に特定のハイテク株の買い注文を出す」といったシステムを自作して利用できる。

 今年3月に国内株式取引のウェブサービスを公開。国内の証券会社では唯一の取り組みだ。5月10日には「日経225先物」取引のウェブサービスも公開した。夏までをメドにFX(外国為替証拠金取引)のウェブサービスも公開する方針である。高島秀行社長に狙いを聞いた。

ウェブサービスの利用状況は。

高島社長:今年3月29日に国内株式取引のウェブサービスを公開してからまだ1カ月だが、既にウェブサービス経由の取引が約定ベースで全体の1割を占めている。最終的には3~4割の水準まで持っていきたい。

 5月10日に始めた日経225先物のウェブサービスについてはまだ実績データがないが、ウェブサービス経由の利用比率は国内株式取引を大きく上回るだろう。日経225の値動きは、国内外の金利や為替などの動向に連動するので、自作システムによる自動発注になじみやすい。

どういう人がウェブサービスを利用しているのか。

 ネット証券を利用する個人投資家のなかにも、常時多額の資金を動かす「ミニ機関投資家」が増えつつある。こうした人は、株価や為替、経済指標の動きなどを研究して、自分なりのロジックや取引手法を開発し、それ基づいて取引をしている。ウェブサービスの利便性は高いだろう。

国内では、ほかにウェブサービスを公開している証券会社はない。

 当社は昨年5月の開業当初から「ウェブ2.0の発想で証券会社を作る」ことを掲げてきた。同業他社は従来型の証券会社がインターネットに進出しているケースが多い。GMOインターネットグループが母体だった当社ならではのサービスだと自負している。

 投資家から取引所に注文をつなぐのが証券会社の最大の役割だとすれば、その機能をインターネット経由で公開するのは当然の流れだ。投資家は自分が考え出した取引手法を自由に試すことができる。ほかの証券会社も、機関投資家向けには同様のサービスを提供していることもある。発想自体は新しいわけではない。

 証券会社側のサーバーに大きな負荷がかかるのも、(同業他社が)ウェブサービス公開をためらう理由の1つかもしれない。当社も負荷の動向を見極めるため、当初予定よりウェブサービス公開開始が遅れた。ウェブサービス経由のアクセスは自動的に来るため、(ウェブブラウザーを通じて手動で行われる)通常のアクセスに比べて負荷は2倍程度になる。

 ウェブサービス公開に際して、現行の総負荷の4倍程度にまで耐える大幅なシステム増強を行った。当社は自社開発に徹しており、システム投資額は多くはない。ハードウエアへの投資額は開業以来でも1億円に満たない。ソフトウエアもLinux(リナックス)などオープンソースソフトを活用して費用を抑えている。

今後の見通しは。

 夏ぐらいまでにFX(外国為替証拠金取引)のウェブサービスを公開したい。現在はシステム負荷を抑えるため、個別の株価や板(取引所における注文状況)の情報はウェブサービス経由では提供していない。有料か無料かも含めて、サービスの拡充を検討したい。ただし、当社1社だけでできることには限界がある。株式ニュースや各種株価・経済指標を提供する事業者などがウェブサービスを公開して、個人投資家が自由に使えるような環境になるのが望ましい。

 ほかの証券会社も、今後ウェブサービス公開に踏み切ると見込んでいる。個人投資家は、「その時点で最も取引手数料が安い証券会社を自動選択する発注システム」を開発して利用するだろう。過去に電話業界で最も通話料金が安い電話会社を自動選択する「LCR」という仕組みが普及したのと同じだ。そうなっても当社が選択されるためには、低コスト体質を築いて、業界最安値の手数料体系を維持することが重要だと考えている。