ヤッパは3Dの表示技術に特化したベンチャー企業。2000年に設立し同業他社の買収などで急成長してきた。現在、東京のほか米ニューヨーク、仏パリ、イスラエルに拠点を構える。伊藤社長に、同社技術の強みと3Dをユーザーがビジネスで活用する際のメリットを聞いた。
なぜ今、3Dの処理技術なのか。既に多くの企業が取り組んできた分野だ。
情報が氾濫する今こそ多くの需要がある。自動車や街中のビルなど実際に存在するものをモデル化するだけでなく、日常接している様々な情報が、3Dを利用することで直感的にとらえられる。
その一例が証券会社向けに開発した、相場の動きを把握できるアプリケーションだ。現在、日興コーディアル証券がこのアプリケーションを利用して、顧客に情報を提供している(写真2)。
金融情報の数値やグラフは普通のユーザーにはわかりにくものばかり。これが3Dを活用することで、どの業種で株価が上がったか下がったのか傾向を一目で分かる。動きの激しい市場の動向をリアルタイムで直感的に把握できるわけだ。
企業内で使うソフトウエアに3Dの技術が多用される時代はくるのか。そうだとしたらそのメリットは?
今は限定的かもしれないが、間違いなく搭載されていくだろう。使いやすさや分かりやすさで、明らかなメリットがあるからだ。これは証券会社の相場アプリケーションを見れば分かってもらえるだろう。
表計算のアプリケーションなどオフィス・ソフトでも同様だ。様々なデータがインターネット上に分散しており、それ全体で巨大データベースとなっている。こうしたデータをユーザーが活用するには、3Dの可視化技術が必要不可欠となるだろう。
あまり目立たないが、重工業のユーザーでは社内業務での利用が浸透している。機械を操作するコンテンツを3Dで作成。作業員が実地に出る前の教育に使っている。
ヤッパの技術はどこにアドバンテージがあるのか
ユーザーにストレスを感じさせない点だ。1つは画像の処理速度。3Dの物体を表示して動かすには、多くの数式を駆使し数値を演算しなければならない。当社の技術は最も重要な演算の一つである「頂点移動」を、どの会社よりも早く処理できる。
2つめが1つめに関連するが、低消費電力という点だ。3Dの処理が軽いため、消費電力を低く抑える必要がある携帯電話などモバイル端末にも搭載できる。実際、携帯電話に新規参入したイー・モバイルの端末には、当社が3次元表示の機能を提供している。ファイルを立体的な引き出しに格納するというものだ。
3つめがWebブラウザに特別なプラグインを組み込む必要がないこと。現在ほとんどのパソコンに標準で組み込まれている、Javaもしくはマイクロソフトの実行環境があればいい。
従来はWebブラウザにプラグインをユーザーに導入してもらう必要があったため、多くのユーザーは3Dコンテンツの利用が面倒だと感じていた。「98%ものユーザーが断念する」とのデータがあるくらいだ。