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【前編】電話からIPへの収益転換は必至,2010年に我々はIP会社に変わる

2006年度に光ファイバの新期加入数が120万程度の見通しとなったNTT西日本は,2007年度は140万獲得という計画を立てた。ただ2010年にNTT東西合わせて光3000万回線という大目標に向けては,まだ厳しい状況が続く。NGNのユーザーを広げるアプリケーションの姿やIP時代における競争環境,一部サービスにあるNTT東日本との差異の解消について,森下社長に聞いた。

2007年度の事業計画を発表したがばかりだが,NTT西日本にとって2007年はどのような年になるのか。

 2007年度は本格的にIPへ事業転換する最初の年と位置付けている。固定電話に依存していられなくなってきた中,2007年を起点に2010年までに収益構造を転換しなくてはならない。

 2007年度は経常利益が200億円で営業利益が30億円という,減収減益の厳しい事業計画を立てた。1999年の設立以来,NTT西日本の固定電話の収入はこの7年間で1兆円も下がった。コストダウンで8000億円程度はカバーしたが,2004年に始まったNTSコスト(通信量に依存しない加入者回線費用)の基本料への付け替えと基本料の値下げに加えて,通話料収入の減少やコストダウンに伴う接続料の引き下げなどが効いて,収入が減り続けている。IP系収入は2000年から4000億円増えたが,まだ足りない。

 2007年度は光ファイバで140万の純増を計画している。この数字は2006年度の実績が120万くらいと見込んだうえで,そこから市場を広げれば到達できるだろうというものだ。ここ1~2年はADSLやCATVから乗り換えたり,ひかり電話ができるから光ファイバを使おうといった,ブロードバンドに関心が高いユーザーが増えていく。

 それが2009~2010年ころには,マーケットが大きく変わる。足回りに光ファイバを使いNGNによって通信品質を保証できるようになると,我々が想定していないアプリケーションを使おうという需要が出てくると読んでいる。ブロードバンドに関心がない人も光ファイバを使うようになり,ここでユーザーの数は急速に増えるだろう。

2007年度に商用化するNGNは,フレッツ・光プレミアムのユーザーには,別のサービスが始まるように見えるのではないか。

 かつてADSLから光ファイバに替える必要があるのかという意見が多かった。これと同じで,トリプルプレイを使うなら,現行のフレッツ系のサービスでもそれほどの支障はない。

 しかし,ひかり電話など輻輳(ふくそう)問題を避けて通れないサービスは,現行のIP網では制御しきれない。それに企業のIT化,例えばコンビニエンスストア・チェーンですべての店舗から情報を収集するといったサプライチェーン的な用途に使うには,今の光ファイバで大丈夫かという疑問が生じる。

 将来は,在宅勤務による労働力確保とか少子高齢化に伴う人手不足,要介護老人への遠隔医療などが社会的な課題として表面化する。まだ一般のユーザーには今はイメージできなくても,2010年ころにはこういった問題を解決するアプリケーションが求められるようになる。NGNなら,これらの社会的な仕組みを実現できるかもしれない。

写真●森下 俊三氏
撮影:山田 哲也

そうなるとNTT西日本はほかの企業と一緒にアプリケーションを提供するようになるのか。

 まず我々はインフラを作らなくてはいけないと考えている。NGNとはセキュアで正確なネットワークということ。こういう場があるからこそ,行政サービスやビジネスが乗ってくる。

  固定電話の収益は悪化しているが,まず光ファイバを展開して,2010年時点ではしっかりとしたインフラを提供できるようにしたい。

NGNではパケット交換網で回線交換をエミュレーションするという,いわば誰もやったことがない絵を描いている。

 パケット交換が最も不得意なことをやっているのは事実だ。ただ,デジタル処理の技術が高度になり,パケットでもリアルタイムのサービスを提供できるようになってきた。

 2006年にはひかり電話でお客様に迷惑をかけたが,これはソフトのスペックに問題があったから。あるしきい値を超えると雪だるま式にトラフィックが増えてしまうとか,どのようにガードをかけるとよいかが分かってきた。今後はこの経験を生かしていく。

 心配なのは大きな災害などの場合。ほとんどの人が携帯電話を持つようになったため,一斉に電話をかけ始める。ある地震の際には,発生後約1分で東日本の携帯電話網をはじめとするネットワークがすべて輻輳してしまった。さらにIPネットワークには電話以外の機器や端末がつながっている。

 これらをどう自動的に制御してガードをかけるかなど,ネットワークをコントロールする仕組みが必要になる。今回のNGNトライアルにこういった機能はないが,実装できれば本当のインフラになりえる。

>>後編 

NTT西日本代表取締役社長
森下 俊三(もりした・しゅんぞう)氏
1945年生まれ。70年3月に名古屋大学大学院修了。同年4月に日本電信電話公社(現NTT)に入社。94年7月NTT移動通信網(現NTTドコモ)理事・通信技術システム部長に就任。96年6月に日本電信電話(NTT)理事・設備企画部長,98年6月に取締役・設備企画部長に就任。99年1月に取締役・東日本会社移行本部技術部長,同年7月にNTT東日本常務取締役・技術部長,2000年6月に代表取締役常務・法人営業本部長,2002年6月に代表取締役副社長に就任。2004年3月にNTT西日本代表取締役社長に就任。趣味は俳句。

(聞き手は,林 哲史=日経コミュニケーション編集長,取材日:2007年3月6日)