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VAIO事業本部本部長の石田佳久氏
VAIO事業本部本部長の石田佳久氏
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type Tではキーボードの細部にまでこだわったという
type Tではキーボードの細部にまでこだわったという
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 ソニーは、VAIOの国内発売10周年を記念して企画した「VAIO type T」を2007年5月26日に発売した。同社が「VAIOシリーズ初投入から10年で培った技術の集大成モデル」と位置づけているモバイルノートである。モバイルパソコンの市場性やtype Tの訴求点を、VAIO事業本部 本部長の石田佳久氏に聞いた。

■モバイルノートの市場をどう見ているのか

 日本のモバイルノートの市場は、以前とそれほど変わっていない。それほど大きくなっていないというのが実際のところだ。今でもボリュームとして数が出るのはA4型のノートパソコンだという点からもそれが分かる。

 ソニーに関して言えば、持ち運びできるモバイルノートがノートパソコン全体の出荷台数に占める割合は3分の1程度になっている。モバイルノートの種類も着実に増えている。モバイルが一番増えたタイミングは、13.3型液晶のノートパソコン「VAIO type S」を出したころだ。特に海外でばーっと売れ出した。それまでモバイルノートの市場は海外にはほとんどなかった。欧米など、日本以外の地域は着実に伸びている。

 特にアジア太平洋地域では、VAIOのブランド価値を高められるところからやっていこうということで、モバイルノートから投入した。こうしたことからA4型も販売台数は増えているが、B5クラスのモバイルノートが中心だ。

■VAIO type Tでユーザーに注目してほしいポイントは

 まずはデザイン。ソニーの人間が言うのも変だが久しぶりに、ぱっと見ただけで「VAIOらしくて、いいでしょ?」と言える商品だと考えている。いろんなところへのこだわりがある。

 例えば、キーボード。電卓のようにポコっと出ているボタンのような形は、デザインと打ちやすさを兼ね備えたもの。女性に聞くと、爪を伸ばしている場合、キーボードのベース部分とキーの間に隙間があると爪が引っかかるらしい。ボタンのような形にしたほうが打ちやすいと言われた。それに、キーの隙間があまりないので、ほこりが入りにくい。キーボードにはめ込んだアクリルのパネルは、溶着して本体と一体化することで剛性を高めている。

 液晶ディスプレイは色の再現性や表現力にこだわっている。type T単体が置いてある状態で画面を見ても気付かないかもしれないが、他社の商品を横に並べた状態で画面を比べると、違いは歴然だと思う。色の再現性は、従来のVAIOよりも改善しており、テレビに近づいたと考えている。

 モバイルノートだから個人が購入したとしてもビジネスに使うことを想定し、ビジネスは強く意識している。ただし、VAIOらしさを重視し、AVとの融合や、Windows Vistaでサイドバーを使っても十分な作業領域を確保できるワイド液晶を採用している。そういったところへのこだわりをユーザーに訴求したい。

 かなり苦労したのはアンテナの設計。type Tには無線LAN(IEEE 802.11a/b/g)、Bluetooth、FeliCa、ワンセグと多数のアンテナが組み込まれている。それぞれが干渉しないようにするのは大変なことで、試行錯誤しながら設計している。今回、ワンセグのアンテナを液晶の脇に取り付けた。以前から、ここに付けたいと思っていたのだが、実現が難しかった。きょう体の表面素材に使っているカーボンは、電波を通さないからだ。今回、技術陣の踏ん張りで、ようやく実現できた。

■耐衝撃性を高めるための工夫は

 モバイルノートは耐衝撃性が必要だという認識は当然持っている。だから、デザイン面から薄くても、強度を持たせられるように、あえてカーボンを使った。天板と液晶の間に隙間を作って液晶を守るということはしなかった。そのやり方は一つの答えだが、デザイン面でかっこ良いとは思えない。

 「ソニーの製品は壊れやすい」「“ソニータイマー”(購入後5年程度で自動的に故障する仕掛けがあるという冗談)が発動する」などと言われるが、そんなことはないことをユーザーには理解していただきたい。

 社内では、設計と品質保障、CS(顧客満足)などの担当部門が集まって、毎月一回の会議を実施している。その会議の中で、耐久性についていろいろな議論をしており、それを基にした取り組みをしている。対外的には数値などをアピールしていないが、テストは当然やっているし、市場の状況を見て試験方法を変えてきた。例えば、カーボンを採用したきょう体は、VAIOで最初にカーボンを採用した機種よりも強度が高くなっている。

■最近のウルトラモバイルパソコン(UMPC)との棲み分けは

 モバイルノートとウルトラモバイルパソコンは使い方もターゲットも異なる。ウルトラモバイルは、屋外に持ち出して、どこにいてもインターネットに接続できるというような使い方を訴求していかないと、広くユーザーに受け入れられるのは難しいと考えている。

 特に国内では、簡単にインターネットを使えるという点では携帯電話が圧倒的に強い。当社でも小型のノートパソコン「VAIO type U」を販売している。確かに発売当初よりも市場は大きくはなっていると感じるが、飛躍的に伸びたというわけではない。

■モバイルノートへの今後の取り組みは

 他社と比較してどうしようということは考えていない。これからも、自分たちで何を売りたいのか、訴求したいのかを考えていくつもりだ。