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 SI事業におけるユニアデックスとの提携や,マイクロソフトとの提携によるSaaSの提供など,法人向けサービスの拡大を図るKDDI。各事業者との提携戦略と平行し,ユーザー企業の獲得に向けた新たな施策も始めている。それが,オペレーション・マネージャー(通称OM)制度の導入である。聞き慣れないOM制度を導入した経緯などを田中孝司取締役に聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コミュニケーション



オペレーション・マネージャー(OM)とは何か。


KDDI 取締役 執行役員常務 ソリューション事業統轄本部長 田中孝司氏
 一言で言うと,ユーザーごとに運用や保守に関する“御用聞き”をする担当者だ。技術に詳しい人材を配置している。主な業務は,(1)トラブル発生時の対応,(2)ネットワーク状況の能動的な情報提供,(3)各種サービスの運用相談窓口,(4)トラブルの再発防止策の作成などである。

 具体的に説明すると,(1)は通常の受付窓口以外の役割を果たし,トラブルが起こった場合の事後対応や2次対応,事後報告をユーザーのマネジメント層に対して行うものだ。(2)は故障発生状況や稼働率など,ユーザーのネットワークの運用状況を定期的に報告する。ユーザーの次期ネットワーク構築に向け,蓄積されたデータに基づき,トラフィック状況の変遷といった能動的な情報提供や分析を実施する。

 (3)は,運用に関するユーザーからの様々な相談を受ける。技術的な疑問点や,日々の運用の悩みなどについて幅広く話しを聞く。(4)は,障害や人的障害の再発防止策や,信頼性向上策を作成する。

なぜ今,OMが必要なのか。導入の狙いは。

 ネットワーク構築やSIだけでなく,運用や保守なども含めた,サービスのワンストップ提供の徹底に必要と判断したからだ。

 ユーザーからは,「導入よりもむしろ運用が大変。導入後も誰かが一元的に運用・保守状況をチェックしてほしい」という要望が多くなってきている。通信サービスやSI,WANサービスだけでなくLAN環境まで,統一的な窓口として通信事業者が機能することが求められ始めているわけだ。

 しかし,どの通信事業者も,こうした声に応えられるアカウント体制にはなっていない。我々はそこに目を付けた。おそらく業界初の取り組みとなる,保守や運用まで含めたアカウントを実施するOM制の導入により,ユーザーへの技術的なアドバイスが可能になる。さらに,定期的にユーザーの拠点を訪問し,障害を未然に防げるようなアドバイスも行える。“攻めの運用・保守サービス”を提供できるようになる。

 月一回くらいの頻度で,ユーザーのネットワーク運用状況などを現場でリサーチして,そのあとに分析し,リポート化する――というサイクルで情報提供していく。OMが長く,深くユーザーとつきあうことで,顧客リテンションにもつなげる狙いもある。

これまでは営業担当であるアカウント・マネージャー(通称AM)が,ユーザーの日々の相談窓口として機能していたと思う。AMとOMの違いは何か。

 大きな違いは,技術的なアドバイスをすぐにできるかどうかだ。これまでは,トラブルなどが起こった場合,ユーザーはAMに連絡を取る形になっていた。しかしAMは,あくまでも営業窓口なので,障害時の対応で技術的なアドバイスをすぐにはできず,どうしても持ち帰りとなってしまうことが多い。もちろん,これは障害原因や相談内容にもよるが,OMであれば技術的な相談にすぐに対応できる。

 今後はAMとOMが相互補完することにより,トラブル対応だけでなく提案内容も変わってくるだろう。AMが進める商談にOMもかかわることで,構築だけでなく,構築後の運用体制も含めたトータルの提案がAMは可能になるわけだ。ネットワーク・サービスの提供だけでなく,アウトソーシングの受注などにつなげやすくなる。

すべての法人向けサービスでOMを付けてもらえるのか。追加料金は必要か。

 現在はトライアル中で,20社程度にOM制度を実施している。今後はOMを付けるユーザーを200社くらいにまで増やしたい。特に大企業だけに限定して提供するというわけではない。

 OMを付けられるのは現時点で,固定系のサービスだけだ。モバイル・ソリューションは対象外となっている。具体的には「インターネット接続サービス」や「音声サービス」,「国内/国際マネージドサービス」,「国際データ系サービス」が対象だ。

 ユーザーの満足度を上げ,競合他社との差異化を図る施策なので,追加料金は取っていない。今のところ,対象サービスを使っているユーザーのうち,ネットワーク規模などを基準に選定してOMを付けるようにしている。