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 日本SGIは2007年9月から、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の事業をスタートさせる。ワークステーション・ビジネスの印象が強かった同社がSaaSを手掛ける理由について、和泉法夫社長は「流行に飛びついたのではなく、コンテンツが主役の時代に求められるものを考えた結果だ」と話す。(聞き手は中村 建助)

日本SGIがSaaS事業を手掛ける理由は何か。

日本SGI代表取締役社長 和泉法夫氏
写真●日本SGI代表取締役社長 和泉法夫氏

 日本SGIは以前から「コンテンツが主役の時代がやってくる」と言い続けてきた。コンテンツが主役の時代に求められるものを考え、SaaSを開始することにした。

強みを持つ分野をSaaSで提供する

 何の強みも持たない分野でSaaSを始めようというのではない。コンテンツやビジュアライゼーションといった、SGIが様々なノウハウを持つ分野のサービスを中心にするつもりだ。

 SaaSのビジネスは、利用する企業が増えれば、売り上げがどんどん積み重なっていく。売り切りのシステム・インテグレーションのビジネスとは構造が異なる。数年もすれば、収益源として大きな意味を持つことになる。

具体的にはどのようなサービスを考えているのか。

 当社は、企業の保有する様々なドキュメントをデジタル化するデジタル・アーカイビング・システムを構築してきた。これまでは1つの企業や団体がハードまで自前で持ってきたが、これをサービスとして利用できるようにしたい。

 実際に、システムを自前で持つのは大企業でないので難しいが、社内の様々なコンテンツをデジタル・アーカイビングしたいという声は既に出ている。

 9月からは企業向けだけでなく個人向けのSaaSを開始するつもりだ。そのための課金の仕組みも用意する。

信頼できるSaaSを提供する

日本の企業はまだそれほどSaaSに積極的なわけではない。

 企業を対象とするビジネスは信頼できるものでなければならない。当社はこういった条件を満たしたサービスを提供する。SaaSのメニューにバックアップやセキュリティを含めているのも、企業が安心して利用できるようにするためだ。

 今年1月、データセンター事業者のメディアエクスチェンジと提携し筆頭株主になったのも、サービスの信頼性を高めることが目的。メディアエクスチェンジはIX(インターネットエクスチェンジ)に近い。常に安定した状態でネットワークを制御してサービスを提供しやすくなった。当社の技術者をメディアエクスチェンジに常駐させるなどして、24時間365日のサービス提供に備えている。

 SGIは、スーパーコンピュータの分野をはじめとして大規模なシステムの豊富な構築経験がある。これだけの規模のシステムをこなした経験のある企業は少ない。データセンターの運用などを含め、餅は餅屋に任せたほうが安心だろう。

 Web2.0の世界では無料サービスが花盛りだが、当社はすべてを無料で提供することが正しいとは思わない。自らにとって重要なものであれば、きちんと対価を支払って管理してもらいたいと考える企業は多い。

SaaSの世界をリードしているのはベンチャー企業だ。日本SGIは規模が大き過ぎる。

 確かにこれまでSaaSの世界を引っ張ってきたのはベンチャーだが、ある程度の規模でないと信頼できるサービスを提供するのは難しい。少なくとも当社程度の大きさがなければ、企業が安心できるもの届けることができないのではないか。

 一方で本当の大企業が、SaaSのような新しいモデルのビジネスに全力で取り組むのは難しい。一例を挙げる。米デルはパソコン・メーカーとしてデルは確かに成功したが、ある時点で扱う商品を一気に増やせば、米アマゾン・ドット・コムのような存在になっていた可能性もある。だが現実はそうなっていない。

ハードやソフトはコモディティ化している

以前はハード・メーカーだったSGIがSaaSを手掛けるのには少し違和感がある。

 奇をてらっているわけでも流行に乗ろうとしているわけでもない。

 すでにハードはコモディティ化した。いわゆるソフトウエアもコモディティ化しつつある。今、重要なのはコモディティ化したインフラのうえで何を動かすかということだ。SaaS専業の米セールスフォース・ドットコムが成長しているのは、こういった時代状況を反映したものだろう。

 コンピュータを選ぶことに対する関心が下がりつつあるともいえる。これは「コンピュータ産業」に対してもいえることだ。機械ではなく、人つまり利用者の都合に合わせたものがこれからは求められる。

コモディティ化がSaaSに取り組んだ最大の理由なのか。

 時代の変化に対応しようとしているということだ。

 SGIは以前、VRMLを使って仮想世界のセカンドライフの原型のようなものを作っていたがビジネスとしては大成功ではなかった。だがセカンドライフは急速に成長している。昔と比べてどれだけ技術が進んでいるのかはともかくとして、現在のネットでは簡単に利用できるものが受け入れられる。

 100メガ以上のブロードバンドも一般化した。縦横無尽にネット上をリッチコンテンツが飛び交っているのが現実の世界だ。ユーチューブのようなサービスが彗星のように現れて常識を一変させることも忘れてはならない。

 こういった変化に合わせて企業が変わろうとするのは当然のことだ。よくWeb2.0というが、SaaSなどの事業を含めて現在の当社は2.5くらいの存在ではないかと思っている。