日経コミュニケーションの読者限定サイトで公開した,2005年9月当時のインタビュー記事を掲載しています。内容はインタビュー当時の情報に基づいており現在は状況が変わっている可能性がありますが,BCP策定を考える企業にとって有益な情報であることは変わりません。最新状況は本サイトで更新していく予定です。 |
宮城沖電気は2005年9月,従来から導入していた地震の揺れを元にした設備制御システムと緊急地震速報システムの連携に乗り出した。導入の旗振り役を務める同社の吉岡献太郎代表取締役社長に,期待する効果と今後の課題について聞いた。
なぜ緊急地震速報を導入しようと考えたのか。
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宮城沖電気の吉岡献太郎代表取締役社長 [画像のクリックで拡大表示] |
そもそも当社は,1988年の操業開始時から従来型の地震制御システムを利用している。2003年に起こった比較的大きな地震では,ガスや薬品の流出防止に効果があった。2005年8月の地震でも同様だ。製品が一部壊れたりしたが,翌日には操業を再開できた。
今回,従来から運用していた制御システムと緊急地震速報を連携させることで,さらに被害を減らせると考えて導入を決めた。
従来利用していた地震制御システムについて教えてほしい。
宮城沖電気の操業を始めた88年から,S波(主要動)の揺れを感知して設備を制御する従来型の地震制御システムを社屋に導入している。S波の揺れが来てから,できるだけ早期に危険なガスや薬品の供給システムを緊急遮断するのが主な機能だ。
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宮城沖電気の工場概観 [画像のクリックで拡大表示] |
宮城沖電気の生産ライン [画像のクリックで拡大表示] |
今回,緊急地震速報の情報と連携させることで,どういった効果を狙っているのか。
緊急地震速報によって,S波が来る前に地震の発生を知ることができる。これはさまざまなメリットをもたらす。
まずは作業員の安全確保だ。緊急放送システムと連携させたい。それから2次災害の防止のため,危険なガスや薬品の供給路を遮断する。また,生産ラインを止めるかどうかを的確に判断することで,仕掛かり中の製品や生産装置本体への被害を最小化したい。それぞれに,警告を発したり停止する際の基準を設定する。
こうしたシステムによって,作業員のパニックを回避したり,製品の破損や緊急停止による生産装置の故障が防げるだろう。工場ではいったん操業を止めると,再開までに時間がかかるものがある。緊急地震速報と連携させることで,操業を止めないという判断もできるだろう。ここは装置メーカーと話し合って,どのように連携させるかを検討していきたい。
緊急地震速報のシステムは通信回線やコンピュータ・システムに依存している。
工場で配信を受けるコンピュータや通信機器には,無停電電源装置(UPS)を導入している。これらについては,S波が到着する前に作動するものなのであまり心配はしていない。それよりも,情報を受信する経路が重要だと思っている。
そこで情報を受け取る経路は,地上と衛星の2回線を用意して冗長化を図ることにした。通信機器も2重化している。
今後の課題は。
P波(初期微動)とS波の到達時間の差が少ない直下型の地震への対策が課題だと感じている。例えば,宮城県の「利府-長町断層」の地震などが想定される。緊急地震速報の精度については,試験運用を通じて確認したい。建物に置いてある従来型の地震制御システムと併用することで,精度を上げることも可能だ。
また,建物や設備など基本的なところでの地震対策も重要だと思っている。建物の補強や設備の固定など,いくつかは再点検する必要があるだろう。
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既存の地震制御システム [画像のクリックで拡大表示] |
既存の地震制御システムと連動する弁の自動遮断機 [画像のクリックで拡大表示] |