
NGNは,セキュリティやエンド・ツー・エンドの帯域保証など,さまざまなコミュニティが独立・連携するSNSには向いているのではないか。例えばNGNを活用して,企業に対してSNSをアウトソースする可能性は。
mixiの大原則は,「ネット上におけるコミュニケーションのインフラを目指す」こと。ある企業だけ,ある学校だけ,という形態は眼中にない。それぞれのユーザーが重ねてきたコミュニケーションの経験を,ネットワークの力で時間的・距離的にフラットにすることに価値がある。
例えばユーザーが大学生なら,今の友達とも,高校の同級生や社会人の先輩ともコミュニケーションできる。そうした万人とコミュニケーションする空間を作る,という思想を貫きたい。
確かに特定組織に対するSNSは,一定規模の収益が望める市場ではある。ただ,どこかある特定の限られた空間に提供するというのは,今のところやってないし,これからもやるつもりはない。ミクシィとしては,mixiを日本中のコミュニケーションのインフラにするという路線で推し進める考えだ。
世界最大のSNS「MySpace」が上陸し,3次元仮想世界「Second Life」が脚光を浴びている。mixiは環境の変化にどう対処し,どう発展していくのか。
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撮影:山田 愼二 |
まず「MySpace」については,競合しているという感覚はない。コミュニケーションの手段である以上,「友人がどれぐらい使っているか」という要素でサービスの価値が決まるからだ。向こうが差を詰めてくるにはまだ時間がかかると見ている。
「Second Life」に関していうと,ユーザーが作ったアイテムを流通させられる点,もしかすると経済圏が生み出せる点,そういったコンセプトには共感を覚える。この2点に限れば,うまくmixiのサービスの中にも取り入れていくことができればと考えている。
ただmixiがSecond Life的になるかというと,それは違う。SNSにおける「ちょっとしたコミュニケーション」をしたいときに,3次元の仮想世界でアバターを使うというのは逆に不便を感じるのではないか。ちょっと一言何か言いたいだけなのに,いちいちアバターを操作して出向かなくてはならない。
将来,そうした使い勝手の悪さがなくなると仮定すれば,ネット上に人格を投影し,もう一人の自分が分身として仮想世界を動き回るというのは,面白い体験にはなる。そういった要素を取り入れていく可能性は十分ある。
いずれにせよ,海外での展開は考えている。できればmixi的なサービスで,ほかの国においても展開していきたい。ただしユーザーはおそらく一からまた集める形になる。「その言語圏におけるコミュニケーション手段」という形にして,リリースしていきたい。
使い勝手の面で言えば,携帯電話のユーザーは不便を感じるのでは。インフラという意味では,携帯電話ユーザーの取り込みが不可欠だ。
確かに携帯電話のインタフェースに制限はあるが,実際はむしろ逆。パソコン向けのサイトに比べると表現力では一歩譲るが,その制限がシンプルなデザインと使い勝手を生む。
携帯電話ユーザー向けの「mixiモバイル」は,ユーザー数,ページビューともすごい勢いで増えている。携帯電話は場所と時間を選ばず,手軽にコミュニケーションできるツール。mixiとの相性は良い。
リアルタイム・コミュニケーションに手を広げる計画は。
mixiがここまで発展した経緯を振り返ると,非リアルタイム性コミュニケーションだったからこそ受け入れられたと思っている。インスタント・メッセンジャーでリアルタイムにメッセージを送ったり,相手にメールを届けるといった直接的・直線的なコミュニケーション手段が中心だった時代に,自分の日記を書き,他ユーザーの日記にコメントを書く。それを相手がいつ見るか分からないけれど,いずれは相手に何か伝えることができる。そうした相手を束縛しないコミュニケーションを実現できたところに価値があった。
同期から非同期へという流れからすると,mixiにとってリアルタイムなコミュニケーション手段を拡充するのはやや逆行する流れではある。とはいえリアルタイム・コミュニケーションはユーザーのニーズとしてずっとあり続けるものだと思っている。上手にmixiの世界に取り込めるようであれば,それに越したことはない。
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(聞き手は,林 哲史=日経コミュニケーション編集長,取材日:2007年5月31日)