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 日本を含むワールドワイドで企業向けネットワーク・サービスを展開する米ベライゾン・ビジネス。「ULA」あるいは「メッシュ型」と呼ぶ新しいネットワーク・インフラの構築を積極的に進め,障害に強いサービス作りに注力している。グローバルネットワークプラニング担当のタラズィ副社長に聞いた。

(聞き手は山崎 洋一=日経コミュニケーション



広くネットワーク・サービスを展開しているが,概要を教えてほしい。

米ベライゾン・ビジネス グローバルネットワークプラニング担当副社長のイハブ・タラズィ氏
米ベライゾン・ビジネス グローバルネットワークプラニング担当副社長のイハブ・タラズィ氏
 当社のネットワーク・サービス提供地域は,世界6大陸の150カ国,2700都市に及ぶ。POP(point of presence)数は4500以上になる。IPネットワークのサービスも世界最大級と自負している。フォーカスしている顧客層は法人,特に多国籍企業だ。

 中南米とカナダを含む米州では,10カ国にネットワークを展開し,18本の海底ケーブルに投資している。データ・センターは7カ所にある。米国内には,かなり安定したネットワークを持っている。

 欧州,中近東,アフリカでは23カ国で大規模なネットワークを展開している。31の海底ケーブルに投資済みで,データ・センターは54カ所にある。これは欧州で最大規模の展開と言えるだろう。欧州のバックボーンでは,米国と同じ展開をするべく今年に入ってから作業を進めている。

 アジア太平洋は,グローバルに見て急成長を遂げている地域だ。当社は14カ国でネットワークを展開しており,主要な海底ケーブルは22。例えば日本では,東京・大阪間に光ファイバを持っている。バックホール(国際海底ケーブルの陸揚げ局またはアクセス・ポイントと,都市にあるベライゾンの通信ノードを接続する伝送路設備や回線)もあり,NTTやKDDI,ソフトバンクといった日本の大手通信事業者とも提携している。データ・センターは,日本のものを含めて8カ所にある。

米国で新しいネットワークを展開しているとのことだが,どのようなものか。

 「ULH」(Ultra Long Haul)と呼ぶ,都市間を結ぶ先端的かつ大規模なファイバ・ネットワークだ。様々な標準規格を使っているが,その特徴はネットワークの合間に導入・設置すべき機材の数を減らしたことである。米国のシアトル~ソルトレイクシティ間のルートを例にとると,ULHの導入前は,ルート上に一般的なSONETの伝送装置が置かれていた。ここでOC-48やOC-192のSONETの波長に対してOEO(光,電気,光)の信号変換をしていたわけだが,ULHを導入した現在,このルート上には光増幅装置だけが置かれており,OEOの変換は必要なくなっている。

 ULHがもたらすメリットは三つある。一つは,可用性が高まり,サービス品質が改善されること。これまでネットワークで何らかの障害が発生した場合,その原因は主に機材,つまりルート上の装置にあることが多かった。ULHを展開して従来なら必要だった機材をなくすことで,ユーザーの事業継続性やネットワークの接続性を高められる。

 二つめは,ネットワークの遅延を大幅に改善できること。長距離をダイレクトに伝送するので遅延が少なくなる。多くの機材を間にはさむと,信号をいったん受け止め再発信するため,どうしても遅延が生じる。それをなくせるわけだ。そして三つめのメリットは,設備の立ち上げ作業に要する期間を短縮できることだ。

 現在,ULHの稼働距離は3万9000kmに及ぶ。さらに1万km相当を2007年中に稼働させる予定だ。またULHは40Gビット/秒まで対応できる。日本では,東京と大阪の間でULHを導入している最中だ。

メッシュ・ネットワークを構築していると聞いたが,その特徴は。

 欧米間のネットワークは7つのルートで結んでいるが,それをメッシュ(型)に構築している。仮に3ないし4のルートがダウンしても,顧客に影響が及ぶことはない。残る3ルートでサービスが自動的に回復されるからだ。

 それはバックホールの部分にも及んでいる。つまり当社のメッシュ・ネットワークは海底と陸上の両方を網羅し,陸揚げ地点から都市内部に至るまでの冗長性を確保している。そうでなければ,都市間のエンド・トゥ・エンドでの冗長性を実現できないからだ。米国のメッシュ・ネットワークの陸の部分は,先ほど説明したULHをベースに構築を進めている。

 米国では,メッシュ・ネットワークをさらに強化していく。今年中に20の大都市,24のローカル都市に導入する予定だ。この取り組みにより,顧客の事業継続性はさらに改善されることになるだろう。

 同じテクノロジは,今年中に太平洋地域にも導入していく予定だ。その最初が日本で,時期は2007年の下半期中。それに続き,2008年には台湾,香港,中国,韓国の順に展開していく。

大西洋地域に比べ,太平洋地域では十分なメッシュ型ネットワークが構築できていないように思える。

 大西洋地域には海底ケーブルも含めかなりの投資を行っているが,太平洋地域ではさらに投資をしてキャパシティと冗長性を改善しなくてはならないと認識している。「アジア太平洋はこれで十分だろう」という人もいるが,当社では「キャパシティは十分だが,ネットワーク・ダイバシティと多様性,冗長性は不十分」と見ている。このことは,(昨年12月に発生した)台湾沖地震による海底ケーブル障害で明らかになったと考えている。

 アジア太平洋地域における目標は,欧米と同じ品質のサービスを提供すること。顧客のニーズに応じてキャパシティを追加し,冗長性を備え,高速通信を提供することが狙いだ。

 当社の考え方を具現化した取り組みに,TPE(Trans-Pacific Express)がある。これは太平洋を横断する海底ケーブルのコンソーシアムで,参加企業は中国,韓国,台湾などの全6社であり,唯一米国から名を連ねているのが当社だ。TPEが実現すると,10Gビット/秒で中国と米国をダイレクトに結ぶ初のケーブル・システムになる。日本から見れば,韓国や台湾を経てTPEにアクセスできるので,よりルートが多様化し,ネットワーク接続の継続性が高まることになる。

 TPEによりネットワークのキャパシティが増強されるが,冗長性が高まることが重要だ。TPEが実現済みであったならば,台湾沖地震による通信障害は,もしかしたら回避できたかもしれないと考えている。

 当社は海底ケーブルに多大な投資をしてきたが,日米間のキャパシティを増強する取り組みに対する投資にも参加している。特に中国,北アジア,日本,そしてインドを重視している。こうした取り組みを進めていく中で,数年先には太平洋地域でも大西洋地域と同様の高い接続性を持つネットワークが構築されることを目指している。

バックボーンから顧客側のネットワークの可用性や冗長性の確保について,どのような取り組みをしているか。

 マルチパスのイーサネットにすれば,ネットワーク・アクセスの持続性を実現できる。それからROADM(reconfigurable optical add/drop multiplexer)を米国の大都市に展開する(関連記事へ)。メッシュ型ネットワークと類似した性質を持つ仕組みだ。とは言え,少なくても数年先までは,顧客がサバイバビリティを実現するうえでポイントとなるのはSDH(同期ディジタル・ハイアラーキ)とSONET(光同期伝送網)のループを活用することだろう。

 電源を冗長化することも重要だ。高い可用性を求める顧客には光ファイバのパスを複数敷設するようにしている。SDHのループの2カ所から顧客のもとへ光ファイバを出しておき,最終的には複数できたパスをたばねてベライゾン・ビジネスのサービスにアクセスできるようにしている。

 話は変わるが,当社はMPLS(multiprotocol label switching)のサービスもグローバルで提供しており,顧客は従来型の専用線よりこちらを選ぶ割合が増えている。停電などの問題が発生した場合,より機敏に対応できるからだ。巨額の投資をすることなく,MPLSサービスを利用してもらえば,ネットワークの持続性をかなり強化できる。利用も増えている。それから顧客の拠点から当社の施設へのアクセスには,イーサネットが好まれるようになっている。顧客が複数のサービスを一つのイーサネット・パイプに収められるので,コスト削減を図れるというメリットがある。