PR

 インターネット電話と音声/ビデオ/チャットによるメッセージングを兼ね備えたサービスの一つが,米eBay傘下のルクセンブルクSkype Technologiesが提供するネットワーク・サービス「Skype」である。同社はSkypeのインフラであるP2Pネットワークを他のアプリケーションから利用できるようにするAPI「Skype API」を公開しており,同APIを用いた応用ソフト「Extra」(エクストラ)の普及を推進している。日本の開発者向け会議「Skype Developer Conference 2nd」のために来日したSkype幹部に,開発者を取り込む同社の戦略を聞いた。



ルクセンブルクSkype TechnologiesのPaul Amery氏(左),Antoine Bertout氏(中央),Lester Madden氏(右)
[画像のクリックで拡大表示]

今回の来日の目的は何か。

 イノベーション(革新)は日本から起こる。任天堂などを見ても分かる。Skype Technologiesはリッチなコミュニケーションを提供し続けていたい。このためには日本の開発者のクリエイティブなパワーが不可欠だ。

開発者を取り込む戦略なのか。

 その通りだ。SkypeをP2Pネットワークのプラットフォームとして利用する数々のアプリケーションを開発してくれる開発者とともに成長していきたい。現在,Skype APIを使ったアプリケーションであるExtra(エクストラ)の開発者の数は,個人と企業含めて6000に上っており,開発だけでなくSkype関連製品/サービスの販売まで手がけるパートナ企業は50社に達する。例えば,重要なパートナの1社として,Skype APIをJavaから利用しやすくするJavaクラス・ライブラリである「Skype4Java」を開発した日本のユビオンがある。

 多くの開発者にSkype APIを使って欲しいと願っている。Skype APIを利用したアプリケーションが増えてくれることで,Skypeのユーザー,Skype APIを利用する開発者,Skype Technologies,このすべてが利益を享受できる。開発者は,ネイティブなSkype APIを使う方法だけでなく,Skype4Javaのようなラッパー(wrapper)を使って,より容易にSkype APIを扱えるようになっている。

 ユビオンでは,正式リリースはまだだが,Flash開発者/デザイナがFlashからSkype APIを簡単に利用するための「Skype4Flash」がテスト段階に入っている。Skype APIを利用するアプリケーション開発者が,さらに増えるだろう。また同社は,SkypeのP2Pネットワークをインフラに使うVPN(仮想プライベート・ネットワーク)構築製品も開発中だ。

Skype APIを利用したアプリケーションであるExtraを開発するメリットは何か。

 Skypeユーザーは世界に2億2000万人いる。開発者からしてみると,凄いマーケットだ。Extraの実際のダウンロード数は,Skype 3.0をリリースした2006年12月から9カ月間で3200万回。私は,私の息子とSkypeでコミュニケーションをとっているが,この際に使うアプリケーションは,Skypeの3rdパーティがSkype APIを使って開発したものだ。私自身,こうしてExtraを愛用している。

 Skypeユーザーの数もさることながら,2006年12月のSkype 3.0からは,従来のWebサイトを用いたExtraの紹介ページ「Skype Extras Gallery」に加えて,新たにSkype本体にExtraの紹介画面を内蔵した。これを「Skype Extras Manager」と呼ぶ。より積極的にExtraを広めたい場合,WebよりもSkype内蔵機能を利用した方が,顧客に対して,よりリーチできる。Skypeユーザーからしても,Skype Extras Manager経由の方がExtraを容易に組み込める。

 代表的な例を示そう。「CrazyTalk for Skype」と呼ぶ,ビデオ映像の代わりにアバターを使って音声通話を可能にするExtraがある。同ソフトは,WebサイトのSkype Extras Galleryで紹介していた頃は,月あたり1000回ほどしかダウンロードされていなかった。ところが,Skype Extras Managerで紹介するようにしたら,月間100万件を超えるダウンロード数にまで増えた。大成功した事例だ。

 なお,Skype Extras Managerを用いた販売は,売れた分だけSkype Technologiesに手数料を払うモデルを採用した。売れれば売れるだけ,Extraの開発者もSkype Technologiesも両者ともに儲かる仕組みだ。SkypeとExtraの関係は,「SkypeはExtraにとってのイネーブラ(Enabler)としての役割を果たす」ということだ。

最近のトピックは何か。

 Skypeにプラグインして使うアプリケーションだけでなく,Skypeの機能をプラグアウト,すなわちSkypeを利用したマッシュアップも推進/啓蒙している。Skype Mashupコンテストを開催したところ,2007年6月から8週間で20件もの応募があった。

 例えば,Skypeを利用してファクス(FAX)を送受信するアプリケーションや,無線LANの基地局を検索するアプリケーションなどがあった。日本の開発者からも,SkypeからTwitterを利用できるようにする「twitter4skype」と,オンライン・ゴルフ・ゲームの「Goltomo Live」が提示された。

 Skype Technologiesでは,開発者との対話の機会をできるだけ多くとりたいと思ってる。開発者が何を求めているのか,開発者が何を作って実現したいのかを知りたい。