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 CIO(最高情報責任者)はSOA(サービス指向アーキテクチャ)についてどう考えているのか。前回に引き続き、多くの世界のCIOとの会話を重ねている米アクセンチュアのボブ・スー氏に、SOAの現状について聞いた。(聞き手は桔梗原富夫)

企業はSOAに何を求めているのか。

米アクセンチュア チーフ・テクノロジー・ストラテジスト ボブ・スー氏
写真●米アクセンチュア ボブ・スー氏

 基本的には、データを統合したり2つの違ったシステムを組み合わせて1つのことができるようにしたりしたいということだ。消費者向けのインターネットで10代の人間がマッシュアップするように、簡単にこういったことをできるようにするのがSOAの理想だろう。

 もう1つ、BPEL(Business Process Execution Language)もSOAの可能性がある。システムの最初の設計時点だけでなく、ビジネス・プロセスに沿って多くの利用者がプロセスを定義して変更できるようになれば、開発作業を大きく効率化できる。アプリケーション開発のバックログを分析すると、要求されている内容の大体30~40%はフォーマットや体裁の変更に関するものだ。これを利用者が自分で変えることができるようになる。

UNIXの轍を踏む可能性も

 だが現在は、SOAについて懸念を持っているCIOが増えてきた。複数のIT会社が多くのSOAの標準を打ち出している。ある特定の企業の提唱するSOAがどこまで機能するのか疑問を感じているということだ。

 多くのIT会社がSOAを提唱すると、どこまで相互運用性が確保できるかが不透明になり始めているからだ。UNIXも元々は相互運用の可能なOSとして考えられたものだったが、現在は複数のUNIXが別々に存在している。

 SOAが重要な技術だと考えられているのは、異なる技術やシステムを橋渡しできる可能性があることが理由だ。これまで企業は複数のシステム間を連携させるために、大量のインタフェースを用意する必要があった。毎月、何千というインターフェースを構築しなければならないのだ。しかも個別のシステム間でしか利用できないものも少なくない。

SOAの将来について悲観的なのか。

 歴史的な岐路に立っているということだ。企業が、SOAが満たすべき基準をIT会社に完全に任せれば、SOAはUNIXが辿ったのと同じ道を進むことになるだろう。一方で企業が完全にオープンなものを求めれば、一般消費者向けのインターネットでのXMLのような真の標準が生まれる可能性はある。

 

現状は、米マイクロソフト、米IBM、米オラクル、独SAPの4社がSOA標準争いを繰り広げている。

 特定の企業について言及することは避けたい。ただ1つ言えるのはIT会社が「自分たちはオープンだ」と主張したからといって、それだけでは多くの企業にとって意味がない。実際にどういったことができるからオープンなのかということに企業のCIOは注目するものだ。

国によって状況は異なる

SOAのような新しい技術は企業にとって魅力が薄いのか。

 ITへの姿勢には国によって大きな差がある。メインフレームを採用して、早い段階で情報化を進めた日本や米国などは、新しい技術の採用に対して保守的になっている。

 その昔、アメリカン航空はコスト効率が高いと判断して、米国で最も古い航空機であるフリートを使い続けることを決定した。日本や米国の企業もコスト効率から考えてレガシー・システムの運用を続けようと考えているのだろう。

その考え自体が間違いかどうかは判断が難しい。

 確かに一見、古いものを使い続けるとコスト効率は高いように見えるが、新しいシステムに置き換えることでどれだけ生産性を向上できるのかという点を見落としている。保守の効率も変わってくるだろう。システムを変えることで利用者の満足度が上がる可能性があることも認識しておかなければならない。

 米国が既存の技術にこだわっている間に、日本や韓国は携帯の世界で遙かに先に進んだ。中国は日本に比べて新技術の採用に積極的だ。企業情報システムの世界で同様のことが起きないとも限らない。

IT投資の動向も影響する

 IT投資動向の変化も意識する必要がある。当社が世界の260社の企業を調査した結果、過去数年のIT投資はかなり限られたものだということだ分かった。

 コンプライアンスやセキュリティ関連を中心にした財務関連のものが中心だった。ニーズを満たすために、独SAPや米オラクルの財務管理システム用の製品を購入した企業も多い。

 財務関連のアプリケーションについては、SAPとオラクルの2社を合わせると70%を超すシェアがある。だがそれ以外のプロセスについては30%未満にすぎない。今後は、財務以外の分野でのIT投資が進めば、アプリケーションの統合はより重要なテーマになってくる。

最後に日本のCIOに対する印象について聞ききたい。

 ITが企業戦略のなかで重要な部分を担っているということを企業が意識しながらも、CIOは既存のITインフラのコストの管理役としての業務を任せられていることだ。これは特に日本で目立つ。ただこれは将来には変わってくるだろう。ネットの進展などにより企業は大きな変革の時期を迎えているからだ。