マイクロソフトは、ネット事業の利用者獲得競争でグーグル、ヤフーに遅れた。米国ではネット広告の米アクウォンティブを買収したり、「Windows Live」の検索サービスの刷新を続け性能を向上させたりするなど、追撃を急いでいる(NBonlineの関連記事)。マイクロソフト執行役常務オンラインサービス事業部長の笹本裕氏に、Windows Live、「MSN」の今後の戦略などを聞いた。
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マイクロソフト 執行役常務オンラインサービス事業部長 笹本裕氏 |
なぜアクウォンティブを買収したのか。
アクウォンティブの買収は大きな意味がありました。マイクロソフトはこれまで、技術・サービス開発を自社で済ませる会社でしたが、開発する時間を買うことにしたんです。オンラインのビジネスを急拡大したいという意志の表れです。社内カルチャーへのインパクトや事業モデルの推進に大きな影響があります。その結果はこれから出てきますが、その兆しを感じています。
アクウォンティブに巨額な投資(約60億ドル)をしたが、価値はどこにあるのか。
ターゲティングの技術力、広告主の投資に対する効果を最大限にする技術が有効だと思います。サイト上のターゲティングだけでなく、広告主のサイトに行った後のユーザーの行動に応じた情報提供を最適化することもできます。マイクロソフトは単にトラフィックを流すポータルサイトでなく、総合的な広告効果を高める技術力を持つことができました。広告主に深く提案できるものが増えたと思います。
マイクロソフトが今、注目しているネットマーケティングの技術や手法は。
一つはWindows Liveで推進していくコミュニケーション系。「Hotmail」や「Messenger」などコミュニケーションから派生するネットマーケティングが可能です。もう一つがポータルで、ずっと「リッチ(なコンテンツ)&(幅広く)リーチ(できる媒体)」で提案してきました。
これらを下で支えるのがアクウォンティブのターゲティング技術になります。コミュニケーションとコンテンツと行動ターゲティングのソリューションを我々のネットマーケティングの総合力として提供できます。
検索分野も様々な可能性があります。従来は検索語に連動した広告を表示する単純なものでしたが、これからは広告主のサイトに移動してからもユーザーの行動をトラッキングして、最適なコンテンツを表示するといったことも提供できます。入り口から出口まで技術提供できるよう開発を進めていくつもりです。
アクウォンティブの技術を活用したサービスはいつから日本で提供するのか。
アクウォンティブの事業開始は米国に次いで日本ということになります。思った以上に早くなりそうです。今、必要なサーバーの配置などを検証しているが、今のところハードルはありません。MSNとWindows Liveではなるべく早く導入していく予定です。あとは広告主など提供先の開拓をこれから始めます。実装は年明けですが、年内には製品を使ってもらえるところを発表したいですね。広告主はいろいろ考えられるが、特に嗜好品を扱うところが最適だと思います。それとメディアのサイトでの行動を最適化するのにも使えます。
一番注目しているネットマーケティング手法は何か。
動画投稿サイトの「SoapBox」など動画関係が大きく変わっていく時期になると思います。動画を中心としたリッチ化が進んでいくでしょう。次いでターゲティング系のアクウォンティブの技術や、コミュニケーション系のツールの拡大が課題になると思います。
広告主にとっても投稿型が注目点になるのか。
動画は表現力が豊かになります。SoapBoxは企業用にカスタマイズできます。もちろんその場で動画を配信できるし、メッセンジャーで情報交換もできる。企業がどう表現してマーケティングしたいかに応じてカスタマイズできるのです。広告動画の投稿はそのうちの一つの手法だと思います。