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【前編】巨大サーバー群を分散配置,ネットに信頼性を与えていく

米アップルのiTunes Storeを支えるCDN(content delivery network)事業者として知られる米アカマイ。昨年暮れには,任天堂のWiiとSCEIのプレイステーション3でも,ゲーム・コンテンツの配信プラットフォームに採用されたという。アカマイがインターネット内部に作り上げた配信システムの特徴とその目指すところを,日本法人の小俣社長に聞いた。

アカマイには,コンテンツのダウンロードを高速化するキャッシュのサービスというイメージがある。

 アカマイは,1995年にMIT(マサチューセッツ工科大学)で始まった「インターネットに信頼性を与える現実解は何か」という議論に端を発して設立された。そこで導き出された現実解は,「アカマイ・サーバー」というプロプライエタリなサーバーを開発して,エンドユーザーの近く,つまり世界中のISP(インターネット接続事業者)に置いていくことだった。分散配置されたアカマイ・サーバー間で情報をやり取りして,インターネットの中にオーバーレイ・ネットワークを作る。これを活用すれば,インターネットの信頼性を高められるだけでなく,中継遅延を短くしたり,可用性を高められると考えたのだ。

 また,コンテンツがリッチになれば著作権問題が発生してくるが,その場合は著作権が及ぶ範囲,つまり特定のコンテンツを特定の地域にだけ配信する制御技術が必要になる。ところがインターネットそのものには,特定の地域にだけ配信エリアを絞るという仕組みが組み込まれていない。そこでアカマイは,インターネット経由で特定のコンテンツを特定の地域にだけ配信する技術も提供している。

 確かにキャッシュはサービスのベースとなる技術だが,全てではない。というのは,キャッシュは静的なコンテンツしか配信できないからだ。動的なコンテンツに対応するために,様々な技術を組み合わせている。

アカマイが構築しているオーバーレイ・ネットワークに組み込んでいる技術には,キャッシュ以外にどのようなものがあるか。

小俣 修一(こまた・しゅういち)氏
撮影:丸毛 透

 基本技術としては,ユーザーの端末とWebサーバーを結ぶインターネット上の経路を複数作って,その中で最も速いものを選ぶ技術を導入している。具体的には,ユーザーの端末に一番近いところにあるアカマイ・サーバーが,Webサーバーとの間に三つの経路を設定する。一つは通常の経路で,残る二つは他のアカマイ・サーバーを介在させて作る経路だ。そして,常時,この三つの経路のどこが空いているのかをチェックし,一番空いている経路を使ってWebサーバーとユーザーの端末が通信するように制御する。こうすることで,混み合っている回線を避けることができる。世界中のISPにアカマイ・サーバーを置き,リアルタイムでアカマイ・サーバー間の回線混雑状況を監視しているからできる手法だ。

 センターでは個々の経路の速さを集中的に調べており,おおよそ数分おきにエッジ側のアカマイ・サーバーに最新の経路情報を送っている。

コンテンツを高速配信するために,アカマイ・サーバー間を結ぶ専用の回線を用意しているわけではないのか。

 専用の回線は用意していない。すべて,インターネットの回線だけで配信している。経路はインターネット上に構築されるが,キャッシュも使っているので帯域を大量に消費することはない。インターネットを構成する回線は無数にある。ある回線がとても混んでいたとき,その回線を使わずに空いている回線を使ってデータを運べば遅延は抑え込めるし,可用性も高められる。例えば2006年末に起こった台湾沖地震の際に,中国沿岸部のクライアントが米国にあるWebサーバーにアクセスできなかった例があったと思うが,当社の顧客にはう回路を提供したので通信は途絶えなかった。

 車の運転に例えると,アカマイは詳細な渋滞情報を持ったナビゲーション・システムのようなものといえる。どの道路が渋滞しているのかを常時監視し,あて先に応じて一番空いている道に誘導しているわけだ。

各ISPに設置済みのアカマイ・サーバーはどのくらいあるか。また,アカマイとISPはどのような関係にあるのか。

 世界的に見ると,約1100のISPおよびIX(インターネット相互接続点)にアカマイ・サーバーが置かれている。設置を始めたのは1998年。3年計画だったが,当初の計画に遅れが生じ,世界展開が一通り終わったのは2003年になってから。この時点では約1万台強だったが,今では2万5000台にまで増えている。日本では1500台程度のアカマイ・サーバーが,数十社のISPに入っている。

 アカマイと各ISPはwin-winの関係を築けていると思う。というのは,ISPにアカマイ・サーバーが置かれていないと,上位プロバイダや他ISPとのトラフィックが増えてしまい,回線コストを押し上げてしまうから。アカマイ・サーバーがISP内にあれば,そこから情報を配信できるので,ISPは外とやり取りするトラフィックを少なくできる。

>>後編 

アカマイ 代表取締役社長
小俣 修一(こまた・しゅういち)氏
1954年生まれ。コンパックコンピュータ(ヒューレット・パッカードが買収)のコンピュータ営業推進本部長,NTTソフトウェアの営業統括部長,日本BEAシステムズの取締役営業本部長,マクロメディア(アドビシステムズが買収)の常務取締役などを経て,2005年12月にアカマイの代表取締役社長に就任した。

(聞き手は,林 哲史=日経コミュニケーション編集長,取材日:2007年10月11日)