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 買収を繰り返しながらセキュリティ・ソリューションの充実を図るシスコ。今年6月にはSDN 3.0(SDNは自己防衛型ネットワーク)を発表した。シスコのセキュリティ・ソリューションはどこまで来たのか。セキュリティ・マーケティング担当のマイケル・ジョーンズ シニア・プロダクトライン・マネージャに聞いた。

(聞き手は河井 保博=日経コミュニケーション



セキュリティに関してシスコが注力するポイントは何か。


米シスコ セキュリティ・マーケティング担当 シニア・プロダクトライン・マネージャのマイケル・ジョーンズ氏
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 ネットワークに接続する端末が多様化し,ネットのユーザーが広がる一方で,攻撃はどんどん巧妙になり,セキュリティは今まで以上に重要になってきている。そのソリューションとしてシスコが提供しようとしているのが自己防衛型ネットワーク(SDN)だ。

 目指しているのは,適応型(アダプティブ)の統合セキュリティを提供すること。ネットワーク機器,各種端末,サーバーとあらゆる部分で守りを固める。そして,それぞれの個所で,トラフィックのパターンやソフトウエアの動作から攻撃を検知して自動的に防御する。

最近は,ベンダーが対策を講じられていないぜい弱性を悪用する攻撃もあるが。

 そういう攻撃についても,予測して先手を打つ仕組みを実装してある。当社の専任者たちが新しいぜい弱性を常にウォッチし,そのぜい弱性を悪用する攻撃のパターンを予測してシグニチャ(バルナラビリティ・ベース・シグニチャと呼ぶ)を作る。

 こうすることで,ユーザーは実際に攻撃が発生するよりも前に対策を打てる。我々は「デイ・マイナス15(攻撃が発生する15日前)」と呼んでいる。ほかにも,ネットワーク上のどこかで不審な通信を見つけた場合に,ネットワーク機器を協調させて攻撃を妨げるような仕組みもある。SDNには,こうした様々な仕組みを実装してきた。

今年6月にSDN 3.0を発表した。従来との違いは何か。

 主な強化点は二つ。コンテンツ・セキュリティとアプリケーション・セキュリティの強化だ。どちらもこの12カ月の間に買収した企業の技術を取り込んで実現した。買収したのは米アイアンポート・システムズと米リアクティビティの2社で,両社の技術を取り込むことで,今までよりも幅広い対策が可能になった。

 アイアンポートの技術は,例えばメールやWebのデータに含まれる悪意あるコードを見つけ出すもの。マルウエアなどからクライアント・アプリケーションを守ることができる。ボットのリアルタイム検知も可能だ。

 もう一方のリアクティビティの技術はサーバー・アプリケーションを守るためのもので,一言で言えばXMLファイアウォール。最近は,企業間をはじめシステムを連携させる際に,XML形式でメッセージをやり取りすることが多くなった。そのメッセージの内容まで解析する「ディープ・インスペクション」技術をSDNに取り込んだ。SQLインジェクションなどの攻撃を検知し,防御できる。

セキュリティ・ソリューションとして,ほかに強化している点はあるか。

 セキュアなモビリティの実現に注力している。具体的には,ファイアウォールやVPNゲートウエイのアプライアンス製品「ASAシリーズ」に実装したSSL-VPN機能を中核として,いつでもどこからでも安全にネットワークを利用できる環境を実現する。最近は,Web 2.0に総称される技術の台頭により,どこからでもいろいろなアプリケーションを利用できる。実際シスコでは,Web 2.0技術を活用してモビリティを高めることで,年に数百万ドルのコストを節約できた。

 ただ,こうした環境では,VPNを介してマルウエアなどが社内ネットワークに入り込んでくる可能性を否定できない。そこで外部からの入り口にASAシリーズが効果を発揮する。ユーザーの利用環境を含めて認証し,コンテンツ・チェックやアクセス制御を実施することで社内ネットワークを守る。

 VoIP(voice over IP),ビデオ会議など遅延にセンシティブなアプリケーションの利用に支障が出ないように,UDP版のSSLに相当するDTLS(datagram transport layer security)という技術も実装した。

セキュリティ・ソリューションとしてまだ機能的に足りない部分はあるか。

 今後の製品計画にかかわる話で,細かいことは言えない。ユーザーが困っている問題点を探り,一つずつ対処していくつもりだ。