PR

 企業情報システムに、コンシューマ、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)、ホスティングの考え方を取り入れることで、従来よりもコストを抑えながら、より高いセキュリティと保守からの解放、を実現できる。アップグレードについて考える必要もなくなる。グーグルの辻野執行役員企画本部長はこう語る。

 Webは急速に進歩している。ハードウエアの価格下落は続いているし、ソフトの世界にもオープンソースの波が訪れた。ドッグイヤーという言葉ですら表現しきれないほどの勢いで環境が変化しているわけだ。こういった状況のなかでは、企業内システム構築の基本的考え方を変える必要がある。

グーグル執行役員製品企画本部長 辻野晃一郎氏
写真●グーグルの辻野氏

 現在、ネットを利用したさまざまなコンシューマ向けのサービスやデバイスは日々進化している。生活のなかで日常的に使うようになっており、なかには、こういうものなしで日常生活を効率的に過ごすことが難しくなっている。こういった技術は企業も積極的に取り込むべきではないだろうか。

 グーグルは検索、広告、アプリケーションの3つの分野を手掛けている。このうち一般の企業にとってかかわりが深いのは、検索とアプリケーションのサービスになる。

 シンプルだが、アリゾナ州立大学の技術責任者が書いた1枚の象徴的な絵がある(日経コンピュータ注:画像はリンク先)。簡単な絵だが、独自にシステムを作り続けていくと革新についていけなくなる一方、Googleなどうまくアライアンスするとこと、世の中の進歩に簡単に追いついていけることを示したものだ。

Google Appsで企業のIT利用を効率化

 外部の調査会社によれば、社内システムの投資の8割が競争力の強化に役立たないものだという。また情報がブラックホール化しており、必要な情報を探すためにも多大なコストが必要になっている。企業の知的財産の60%はメールに埋もれて探すのが困難だという分析もある。

 例えば、メール・システムを作るだけでも、個人のメール情報を管理するために、サーバーに投資しセキュリティを確保し、スパム対策を実行し、パッチを更新しなければならない。これらの作業には大量の保守要員が必要になる。

 グーグルはこういった問題に対する解決法を提供しようとしている。それがSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やホスティングを利用するGoogle Appsである。

 Google Appsは独自ドメインで利用できるGoogleのアプリケーションのスイートになる。Gmail、Googleトーク、Gカレンダー、コラボレーション・ツールのGoogle Docs、スタートページやPage Creatorもある。

 Google Appsには、無償のStandard Editionと有償のPremier Edition、それから教育機関向けのEducation Edition、ISP向けのEditionなどいくつかの種類を用意している。すでに中堅・中小企業ではGoogle Appsが広がり始めた。

メールのコストがを8割以上削減

 GmailはAjaxを用いた使い勝手のよいメールだ。日本では、Webメールのなかで数パーセントのシェアにとどまっているが、利用者の評判はいい。有償のPremier Editionは1人当たり25ギガバイトのメールボックスを割り当てている。既存の企業システムと統合するための拡張APIも提供している。

 Googleカレンダーはスケジュール管理のサービスになる。忙しい人間にとってスケジュール管理はなかなかやっかいなものだ。秘書などが時間をかけて調整していることも少なくない。Googleカレンダーは自分だけでなく他人のスケジュールを共有することもできる。Gmaliとも連動する。Premier Editionでは空き状況など見て会議室を予約することなども可能だ。Googleカレンダーを使えば、スケジュール調整のコストを下げ業務効率が向上する。

 Google Docは、これまで手元のパソコンで使っていたデスクトップ・アプリケーションを、コラボレーションしながら使えるようにする。これまでは手元で文書を作成し、一々メールに添付して管理していたような作業を、サーバー側の1つのファイルとして管理できるようになる。ワープロだけでなく表計算シートもあり、グラフも簡単に表示できる。チャットしながら作業を進めることもできる。最近、プレゼンテーション・ツールも追加した。

 オフィス・ソフトとしての基本的機能はそろったのではないか。もちろん商品として改善の余地はある。日々、改善に努めているところだ。表計算、ワードに相当するものについてはかなり使い勝手も良くなっている。コラボレーションを通じた生産性の向上を体験すると、なかなかデスクトップ・アプリケーションに戻れない。

 コスト面のメリットも大きい。実例の1つとして弊社のケースを説明したい。以前はグーグル社内でも、Gmailではない別のシステムを使っていた。これを1年ほど前にAppsに移行した。当時、対象となる社員の数は約1万人ほどだった。

 既存システムでは1年間で1人当たり785ドル必要だったのに、導入後は87ドルに削減できた。以前はメールに加えウイルスやスパム対策、メッセンジャー、ワープロや表計算ソフトを購入していた。これがなくなった。移行後の1年間87ドルには、教育や移行のコストも含まれている。さらにパッチをあてる必要もなくなる。