「InfiniBandこそが主流」---。主にサーバー/ストレージ向けのインターコネクト技術として,InfiniBandとイーサネット(以下,Ethernet)の2つの分野を軸に事業展開する半導体チップ・ベンダーが,米Mellanox Technologiesである。サーバーにI/O機能を追加するHBA(Host Bus Adapter)向けに2007年9月に出荷を開始した第4世代チップ「ConnectX」では,1チップでInfiniBand(40Gビット/秒)とEthernet(10Gビット/秒)を兼ねる。同社で製品マーケティング担当副社長を務めるThad Omura氏に,InfiniBandを取り巻くネットワーク技術の動向と将来展望を聞いた。
![]() 米Mellanox Technologiesで製品マーケティング担当副社長を務めるThad Omura氏 [画像のクリックで拡大表示] |
ネットワーク接続技術におけるInfiniBandの位置付けは? InfiniBandとEthernetをワンチップ化した主旨は?
InfiniBand,Ethernet,FibreChannelの主要3技術の性能のロードマップを比べると,InfiniBandが絶対値においても成長率においても抜け出ている。InfiniBandのスイッチ間接続速度は,2006年時点で60Gビット/秒,2008年には120Gビット/秒と2倍になる。ノード間でも,20Gビット/秒が40Gビット/秒になる。このように,InfiniBandこそがデータセンターの中核技術である。データベース・サーバーや業務アプリケーションなどあらゆるアプリケーションが,低いレイテンシ(遅延時間)と高い転送性能を求める。InfiniBandは主流であり続ける。
企業はただ,I/OをInfiniBandに変更するだけで,ビジネスに成功する。スーパーコンピュータの性能ランキングであるTOP500のリストの中でも,InfiniBandクラスタの数は,2005年の30システムから2006年の82システム,2007年の125システムへと順調に伸びている。ちなみに,TOP100の中の38システムがInfiniBandクラスタだ。ギガビットのEthernetも,TOP500中では,2005年の249システムから2007年の271システムへとInfiniBandほどではないにせよ伸びている。一方で,プロプライエタリなI/Oは減り続けている。
これまでサーバーのI/Oは性能が低いか,もしくは高額で消費電力が大きかった。安価な製品では,メモリー・バスやCPUバスの速さと比べて,I/Oはせいぜい1Gビット/秒程度と貧弱だった。一方で,InfiniBandのカードと10Gビット/秒のEthernetカードを搭載すると,転送速度で10Gビット/秒,遅延時間で50マイクロ秒クラスの性能を得られるものの,価格は2400ドル程度,消費電力は28ワット程度を消費していた。ここで,米Mellanox Technologiesのチップを採用すると,900ドル,1マイクロ秒,10ワット程度に抑えられる。
FC(FibreChannel)のハードウエアはなくなるのか。
イエスだ。今後5年から8年くらいで,FCのハードウエアはなくなる。ただしソフトウエアとしてのFCは,需要があるので残り続ける。FCoIB(FC over InfiniBand),またはFCoE(FC over Ethernet)という形で使われ続ける。
FCoEでは,米Mellanox Technologiesも,米Brocade Communications Systemsなどとともに,ANSI(米国規格協会)のFC統括部門であるT11委員会の標準化作業に従事している。FCoEは,データ・センター向けのエンハンスであるCEE(Convergence Enhanced Ethernet)と呼ぶ次世代のEthernet規格とともに,Ethernetを進化させていくことになるだろう。
では,Ethernetは存在し続けるのか。InfiniBandに一本化されることはないのか。
InfiniBandは,性能を追求する場面で使われる。TCP/IPをもっとも高速に使えるプラットフォームはInfiniBandだ。一方で,使い慣れたEthernetを継続して使いたいとする需要も残るだろう。コネクタとケーブルに関しては,InfiniBandのものをそのまま使う10GBASE-CX4と呼ぶ規格がある。
価格的には,1Gビット/秒のイーサネットが極めて安く,極めて広く売られているが,10Gビット/秒のイーサネットはまだ数が少なく高額である。10Gビット/秒のEthernetと比べたら,InfiniBandは決して高くない。
FCプロトコルを他のプロトコル上に載せるのと同じくEthernetをInfiniBandに載せる“Ethernet over InfiniBand”という考え方も存在しており,そのうち製品が登場するだろう。