2007年5月に発売したPriusを最後に個人向けパソコンの生産を中止した日立製作所。その第一報が報じられてから約1カ月が過ぎた。日立製作所のコンシューマ事業グループ デジタルコンシューマ事業部 パーソナルメディア本部の米永斉氏と林昭夫氏に改めて、その経緯と今後の同社のPC戦略を聞いた。
■Priusの生産中止を決めた経緯は。
我々はPriusを提供する中で、テレビがすぐに使える機能や、地デジ対応PCの普及価格帯での提供など、放送通信融合の分野ではある程度の役割を担ってきたという自負があります。ただ、それをさらに一歩進めて先に行くには、従来型のPCではない形で提供する方がよいのではないかという選択になりました。もともとは放送通信分野にシフトしていこうと考えていたので、そこを加速して、よりAV系に近いところで放送通信を融合した製品を世の中に送り出し、より高い付加価値を顧客に届けようということになったわけです。
3月のHPの件を発表(ビジネス向けのパソコンを日本ヒューレット・パッカードからOEMで調達すると発表)した時点では、まだPriusのことは決まっていませんでした。
「箱」だけでは厳しい
パソコンは今やコモディティ(日用品)化してきましたし、顧客もある意味ではそれを期待しています。一方で、パソコンの平均売価が上がっていることを考えると、高機能のパソコンも求められている部分もあり、市場は二極化しているのかな、と思っています。ただの箱としてのパソコンと、付加価値を付けた高機能のパソコン。前者では生き残れないし、後者を考えたときに、箱としてのパソコンではなく、さらに一歩進めて付加価値を付けた別の形で製品を開発しようと思ったのが今回の我々の結論です。
Priusの出荷台数は、2005年が約24万台、2006年は約14万台、2007年の1~6月までで約4万台。正直、楽ではなかったとは思います。ただ、箱としてのパソコンであるPriusはもう出しませんが、新しいことをやる思いは持っていますので、我々としては一歩先に進んだと考えています。