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米インテルは,同社製品の省電力化を進めるだけでなく,業界団体「Climate Savers コンピューティング・イニシアチプ」を立ち上げるなど,IT業界における地球温暖化対策に積極的だ。その理由を,IT業界内の標準化や法整備の動向に詳しい,ドナルド・ホワイトサイド副社長に聞いた。

写真●米インテルのコーポレート・テクノロジー統括本部 ドナルド・ホワイトサイド副社長
写真●米インテルのコーポレート・テクノロジー統括本部 ドナルド・ホワイトサイド副社長
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なぜインテルは,環境問題にこれほど積極的に取り組むのか。

 グローバルの経済状況に大きく影響するため,そして環境問題が非常に深刻であると認識しているためだ。そこで先頭に立って口火を切り,「Climate Savers コンピューティング・イニシアチプ」などを設立した。

 ITと経済には強いつながりがある。しかしITにはエネルギー政策上,好ましくない実態がある。例えばパソコンの電源は,供給した電源の65%しか使用しておらず,35%をロスしている。また,パソコンは省電力機能を搭載しているにもかかわらず,企業の多くはその機能を使っていないという調査結果もある。そういった状況を改善する必要があると考えている。


業界全体の問題として取り組むことが必要

IT業界の環境問題対策として求められていることは何か。

 まずは,環境によい製品を継続的に開発し,提供していくことだ。CPUだけでなく,電源やパソコン本体,ソフトウエア,データセンターなど,ITの製品・サービス全体で環境に配慮する市場を構築していくことが重要である。

 社会のニーズに合った製品やサービスは,規制対象になったからではなく,あくまで市場原理に基づいて提供されるべきだ。私たちはこれを「ナチュラル・マーケット・プレッシャー」と呼んでいる。

 もう1つは,IT業界全体で共通認識をもって取り組むことだ。環境問題は米国や日本だけでなく世界共通のものなのだという認識を持つ。その上で,ITが対策に貢献できることは何なのか,物理的に“モノ”を動かすのではなく電子化して二酸化炭素(CO2)排出量を削減できないか,を考えることが求められている。

IT業界がこれだけ省電力化した製品をアピールするのは,単に業界全体の売り上げを増やしたいからだ,と指摘する声もある。

 現時点で,どの製品が優れているのかをしっかり検討すればよいのだ。エネルギー効率が悪い製品を導入すれば,電気料金が高くついてしまうだけ。しっかり製品を見極めて選べば,電気料金は抑えられる。

 今,自動車メーカーは,CO2排出量が少ないハイブリッド自動車を提供しているが,通常の自動車よりも価格は割高だ。しかし,燃費がよいというメリットがあるため,結果的にオーナーが支払うコストが小さくなる可能性がある。

 IT製品でいえば,ノートPCはその一例だ。デスクトップ型パソコンよりも消費電力は小さく,エネルギー消費効率がよい。

経産省の「グリーンITイニシアティブ」には注目している

しかし,すでに利用しているIT機器を入れ換えるには,その作業にも労力やコストがかかる。省電力製品購入を促進するには何か策が必要なのではないか。

 そうではない。ベンダーが魅力ある製品を作り,それをユーザーが自然と導入していくような市場を作っていくことが重要だ。規制を設けたりルールを強制したりするのではなく,マーケットの力でそのような流れを作っていくべきだ。

米国では,「Climate Savers コンピューティング・イニシアチプ」や「The Green Grid」など,ITの環境問題をテーマに掲げる複数の業界団体が相次いで設立されている。

 IT業界は広い。1つの団体だけで,IT業界の省エネルギー化についてすべてをカバーするのは難しい。

 データセンターに関する問題は,The Green Gridが中心になるだろう。もっと幅広く,パソコンやその使い方までカバーするのが,Climate Savers コンピューティング・イニシアチプだ。電源装置メーカーが中心となって立ち上げた「80 PLUS」は,電源のエネルギー効率を80%以上まで高めることを目的としている。

 ほかにもあるが,個々の団体の取り組みだけでは限界があるという認識は共通している。

 日本の経済産業省が主導している,「グリーンITイニシアティブ」には注目している。官民一体となって,IT機器の省電力化やITを利用した環境対策を進めるという取り組みは,世界ではなかったものだ。